金融Web広告の種類と活用事例7選|規制・使い分けをプロが解説

金融業界でWeb広告を担当することになったものの、「リスティング広告は代理店に任せているが、ディスプレイ広告やSNS広告・動画広告にどう手を広げればよいか分からない」「広告の種類が変わると、金商法・保険業法・景表法の適用がどう変わるのかも把握できていない」「そもそもリスティング以外の広告種類が、自社の業態に合っているかどうかも自信がない」といった悩みを抱えているご担当者も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、金融業界に特化したSNS運用支援を行う筆者(ファイマケ代表・苛原寛)が、金融Web広告の5種類(リスティング・ディスプレイ・SNS・動画・リターゲティング)それぞれの特性・規制・使い分けと、実在7事例を一気通貫で解説します。

「リスティング以外の広告に手を広げるべきか判断したい」「規制を踏まえた広告設計の全体像を把握したい」「他の金融機関の事例を参考に施策を組み立てたい」、そんなご担当者にとって、明日からの広告設計に役立つヒントが必ず見つかるはずです。

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この記事はこんな人におすすめ

・金融機関のWeb広告担当を任されたが、リスティング広告以外に何をどう展開すればよいか分からない方
・すでにリスティング広告を運用しているが、コストが上がる一方で成果が伸び悩んでいる方
・他の金融機関がどんなWeb広告をどう活用しているか、具体的な事例を知りたい方
・金商法・保険業法・景表法など法令を守りながらWeb広告の種類を増やしていく方法を知りたい方

この記事を書いた人
苛原寛のアバター 苛原寛 株式会社ファイマケ 代表取締役

慶應義塾大学商学部卒。東京海上日動火災保険で3年間法人営業を担当した後に起業。金融機関のSNS運用代行やWebコンテンツ制作・マーケティング支援を専門におこなう。制作に携わった金融コンテンツは1万件以上。Xフォロワーは8,000人超。1級ファイナンシャル・プランナーの資格を保有。著書『選ばれる金融機関になるためのSNS戦略(金融財政事情研究会 出版)』

目次

2026年、金融機関がWeb広告全体設計を持つべき理由

「とりあえずリスティング広告だけ」という設計が、金融業界でも通用しなくなってきているのが2026年の現状です。まずは、なぜ金融機関がWeb広告全体設計を今持つべきなのかを市場環境と生活者の行動変化から整理します。

デジタル広告費の拡大と「リスティング偏重」の限界

現在、インターネット広告費は国内広告費全体の50%超を占めるまでに拡大しています。
より多くの企業がデジタル広告へ出稿するようになったことで検索広告市場の競争は年々激しくなっており、金融業界ではその傾向が特に顕著です。検索広告の1クリックあたりのコストは他業界の2〜3倍まで上昇しており、業態によっては1クリック1,000〜3,000円、1件の申込獲得に数万円がかかることも珍しくありません。こうした競争環境の中でリスティング広告だけに頼り続けると、費用対効果が年々悪化しやすくなります。

また、リスティング広告は「今まさに検索している人」にしか届きません。生命保険・住宅ローン・NISAといった金融商品は、最初に認知してから実際に申込むまでに数週間〜数ヶ月かかることが多いですが、リスティング広告では「なんとなく気になっている段階」の人には届かないという限界があります。

SNS・動画経由の金融情報収集が若年層に限らず広がっているため

ファイマケが20〜70代の消費者200名を対象に実施した自社調査では、SNSで金融商品の情報収集をした経験がある人は77.0%、そのうち資料請求・口座開設の検討・問い合わせ・比較サイトでの再検索・家族友人への共有など、何らかの行動を起こした人は91.3%にのぼりました。

注目すべきは、これが20〜70代全体での数値であるという点です。「SNSは若年層だけ」という前提は、2026年時点では実態と乖離しているといえます。住宅ローン適齢期の30〜40代、退職金運用フェーズの50〜60代にまで、SNSが金融商品の認知・比較検討の接点として機能している傾向が読み取れ、住宅ローン・NISA・終身保険・外貨建て保険など、幅広い商品でSNS広告・動画広告が認知接点として機能する可能性があります。

「能動的に検索しない」ユーザーへのリーチには広告の多様化が必要なため

ファイマケの調査でも示されているように、「InstagramやTikTokで見かけた投資の話が気になった」「YouTubeで老後資産の動画が流れてきた」といった受動的な情報接触から比較検討が始まるケースは、20〜70代全体で一定数存在することが確認されています。能動的にGoogleやYahoo!で検索する行動だけでは捉えきれない層への接点として、SNS広告・動画広告の役割は無視できません。

この変化は、「能動的な検索者だけを刈り取るリスティング広告」では捉えられない層が拡大していることを意味します。ディスプレイ広告・SNS広告・動画広告で「潜在層の認知」を作り、リスティング広告・リターゲティング広告で「顕在化した需要を刈り取る」という統合設計が必要になってきています。

ファイマケ代表 苛原寛

リスティング広告は「検索している人=今すぐ検討している人」へのアプローチとして今も有効ですが、「検索するという行動そのものが起こる前の段階」にリーチするためには、ディスプレイ・SNS・動画という別の種類の広告が必要になってきています。この「リスティング以外への展開」をどのタイミングで判断するかが、2026年の金融機関のマーケティング担当者の重要な論点の一つだと考えています。

5種類の金融Web広告の特性

ここでは、金融Web広告5種類(リスティング広告・ディスプレイ広告・SNS広告・動画広告・リターゲティング広告)の特性と規制上の注意点を解説します。それぞれ届けられる相手・費用感・規制上の注意点が異なるため、自社の商品や業態に合わせた選択と組み合わせが重要です。

金融リスティング広告|強みと運用上の限界

リスティング広告(検索広告)は、金融Web広告の中で最も運用実績が豊富な広告手法です。

リスティング広告の最大の強みは、今まさに比較・申込みに向けて具体的に調べている人に直接届けられる点です。たとえば、「生命保険 比較」「住宅ローン 金利 見直し」「NISA 口座開設」を検索したユーザーは、検討フェーズに入っていることが明確であり、リスティング広告はこうした明確なニーズを持つ人への接点として有効です。

一方で、金融業界のリスティング広告は、1クリックあたりのコストが一般業界の2〜3倍になる傾向があります。広告費をかけても申込みにつながらなければ費用が無駄になるため、広告をクリックした先のページの改善と、どの検索ワードを狙うかの設計が、費用対効果を保つうえで重要です。

また、リスティング広告で集められるのは「今すぐ調べている人」だけで、市場全体のごく一部にすぎません。「将来的には保険を検討したいが、まだ具体的に動いていない」という人には届かない構造になっています。次のような状況が続いているとき、リスティング以外の広告を検討するタイミングです

  • 競合他社との競争が激しくなり、1クリックのコストが上がって、1件の申込にかかる費用が目標を超えている
  • 狙っている検索ワードで取れるお客さんをほぼ獲得しきった(これ以上増やせない状態)
  • 会社名や商品名で検索してくる人が少なく、そもそも自社を知ってもらえていない

金融ディスプレイ広告|3つの活用用途と規制上の注意点

ディスプレイ広告は、Web上のコンテンツページ・アプリ・YouTube等にバナー画像・テキスト・動画を表示する広告形式です。検索連動型のリスティング広告と異なり、能動的に検索していないユーザーに広告を届けられる点が最大の特徴です。

金融業界では、認知フェーズ・比較検討フェーズでのリーチ手段として、リスティング広告の補完として活用が広がっており、主な用途は次の3つです。

  1. ブランド認知拡大
    「○○銀行」「○○生命」の社名・商品名を、検索していないユーザーに幅広く届ける。テレビCMを補完する「デジタルのマス露出」として機能します。
  2. 潜在層へのアプローチ
    興味・関心による絞り込み(例:「住宅関連の記事を読んでいる人に住宅ローンの広告を届ける)や、年齢・性別による絞り込み(例:30〜40代男性に限定して配信する)など、まだ検索していない見込み客に先回りしてアプローチできます。
  3. リターゲティングの基盤
    一度自社サイトを訪れたユーザーが別のサイトを閲覧しているときに、再び広告を表示するリターゲティングは、ディスプレイ広告の配信面を活用して行います。(リターゲティングの詳細は後述の「金融リターゲティング広告」章で解説します。)

ディスプレイ広告の設計で気を付けることとして、景表法の優良誤認表示・有利誤認表示に特に注意が必要です。「業界最低水準の金利」「業界最安値の保険料」等の比較表現は、合理的根拠を事業者が証明できなければ景表法違反リスクがあります。バナーのキャッチコピーだけで根拠を示すことは文字数的に困難なため、リンク先のLPで根拠・比較条件・調査期間を明示することが重要です。

また、GoogleやYahoo!の広告審査では、金融商品の広告を出稿する際に、広告のリンク先ページ(LP)へ「金融庁への登録番号」や「業界団体への加盟を示す表示」を掲載することが求められる傾向があります。バナーだけを制作して審査に出しても、リンク先ページの記載が不十分であれば差し戻しになるケースがあるため、LP側の整備も広告配信の前提として確認が必要です。

金融SNS広告|Facebook・LINE・X・Instagram別の特性と規制

SNS広告は、各プラットフォーム(Meta=Facebook・Instagram、LINE、X、TikTok等)上で配信される広告です。精緻なターゲティング・拡散性・オーガニックコンテンツとの連動が強みであり、金融業界での活用が急速に広がっています。ファイマケの調査では、SNSで金融商品の情報収集をした経験がある人が77.0%にのぼっており、SNS広告の有効性を下支えするデータとなっています。

SNS広告が金融業界で活用されている背景には、他の広告種類にはない次の3つの特性があります。

  1. 精緻なターゲティング
    Metaは年齢・性別・居住地・ライフイベント(「最近引っ越した」「子供が生まれた」等)・インタレスト(「投資」「住宅」「老後設計」等)を組み合わせた精緻なターゲティングが可能です。「30代・子持ち・住宅ローン検討中」というターゲットに、医療保険・生命保険の広告を届けることができます。
  2. コンテンツとの連動
    SNS広告は、オーガニック投稿(通常の投稿)と同じフィードに自然に表示されます。これは「広告らしくない見え方」という強みになる一方、ステマ規制の観点から広告表記の徹底が必要です。
  3. 広告から申込みまでの誘導方法の豊富さ
    「広告をクリック→LPに移動→申込み」という従来の流れだけでなく、「フォーム広告(SNS内でフォーム入力が完結)」「LINE公式アカウントへの友達追加」「YouTube動画への誘導」等、広告の目的に合わせた誘導方法を選べるのもSNS広告の特徴です。

金融動画広告|YouTube・TikTok・SNSリールの活用と審査対応

動画広告は、金融商品の複雑な内容を分かりやすく説明し、感情訴求でブランド共感を作る手段として、金融業界での活用が急速に広がっています。YouTubeのインストリーム広告(動画の前後や途中に流れる広告)、TikTokのインフィード広告(TikTokを開いてスクロールすると、通常の動画と同じ見た目で自然に表示される広告)、Instagramのリール広告(リール動画の合間に挿入される広告)が主要なフォーマットです。

動画広告が金融業界で果たす役割には、次の3つが挙げられます。

  1. 複雑商品の分かりやすい説明
    生命保険の保障内容・投資信託の仕組み・住宅ローンの金利タイプの違い等、テキストとバナーでは伝えにくい複雑な内容を、映像・音声・アニメーションを使って分かりやすく説明できます。
  2. 感情訴求でブランド共感を作ること
    「家族のために保険に入る意味」「老後の資産をどう守るか」等、金融商品の感情的な価値をストーリーで伝えることができます。テレビCMのデジタル版として、ブランディングと商品訴求を同時に設計できます。
  3. 若年層へのリーチ
    TikTokやYouTubeを頻繁に使用する若年層へのリーチ手段として有効です。20〜30代のNISA・投信積立の認知拡大、保険の必要性の啓発等に活用できます。

注意すべき点として、動画広告に対しても、金商法第37条・保険業法第300条の禁止行為規定が適用されます。映像内のナレーション・テロップ・楽曲等を含めた「広告全体の内容」が規制対象です。「音声では断定的な表現を避けているが、テロップでは強い断言が入っている」という不整合は規制違反リスクとなる可能性があります。

また、YouTubeのインストリーム広告はGoogle Adsの金融サービスポリシーに準拠が必要です。動画広告のランディングページにも金商法・保険業法の義務表示が必要なため、「動画は派手に、LPは法令表示で地味」という一貫性の欠如が生じないよう注意が必要です。

ファイマケ代表 苛原寛

動画広告が金融業界でも有効だと実感するのは、「複雑な商品の本質を感情込みで伝えられる」という点です。医療保険・就業不能保険の必要性を文字や図表で説明しても、読者の心に刺さるまでには時間がかかります。一方、「入院した日に家族が笑顔でいられる」「ガンと診断された日に仕事の心配をしなくていい」というストーリー動画は、30秒でも感情に訴えかけることができる傾向があります。ただし、感情訴求が強すぎると、金融庁・保険業法の観点から「誤解を招く可能性のある訴求」と判断されるリスクがありますので、スクリプト段階でのコンプライアンス確認は必須です。

金融リターゲティング広告|仕組みと個人情報保護上の注意点

リターゲティング広告はディスプレイ広告・SNS広告・動画広告など複数の配信面で実施できる手法であり、これまで解説した各広告種類と組み合わせて設計するものです。ここでは、リターゲティングを独立した設計として取り上げ、金融業界における活用方法と規制上の注意点を整理します。

リターゲティング広告は、自社サイトやランディングページに一度訪問したユーザーに対して、その方が別のサイトやYouTube、SNSなどを閲覧しているときに自社の広告を表示します。たとえば「住宅ローンの比較ページを見たが申込まで至らなかった方」「NISA口座開設の途中でやめてしまった方」に、改めて広告を届けて申込みを促すことができます。

金融業界でリターゲティング広告が特に有効な理由は、購買決定の「時間軸」です。たとえば、生命保険の申込などは「比較検討開始から申込まで数週間〜数ヶ月」というケースが多い傾向があり、一度サイトを離れた見込み客を追いかけ続ける手段として効果的です。

ただし、以下の通りリターゲティング広告は、業界環境の変化と規制の両面で慎重な設計が必要です。

  1. 広告の仕組みが変わりつつあること
    これまでリターゲティング広告では、一度サイトを訪れた方をGoogle側のシステムが追跡する仕組みが広く使われてきました。Googleはこの仕組みを段階的にやめる方向で動いており、今後は自社サービスや問い合わせフォームで直接集めた情報(資料請求履歴・会員情報など)を活用した広告設計が重要になっていきます。
  2. 個人情報保護法の観点
    2022年4月施行の改正個人情報保護法では、ユーザーのサイト閲覧履歴をもとに広告を届ける仕組み(クッキーを使ったターゲティング)について、ユーザーが「自分の情報を広告に使わないでほしい」と拒否できる手段(オプトアウト手段)を提供することが求められる場合があります。
  3. センシティブ情報のリターゲティングリスク
    金融サービスのページ閲覧データは、「ローンを申し込もうとしている」「がん保険を検討している」等のセンシティブな個人の状況を示す情報に近接しています。「がん保険のページを見た人」に「がんになったら」という訴求のリターゲティング広告を打つことは、個人情報保護・ユーザー体験の両面から慎重な判断が必要です。
ファイマケ代表 苛原寛

リターゲティング広告を金融業界で設計するとき、最も注意が必要なのが「センシティブ情報に近接した追いかけ方」です。「がん保険のページを見たユーザー」に「がんの告知を受けたときに備えて」というリターゲティングを打つことは、技術的には可能ですが、受け取るユーザー側の心理的負担やプライバシー感覚を考えると、慎重に設計すべきです。
保険を選ぶという行為は、人生の不安と真剣に向き合う行為だと思います。その局面での広告接触が「誠実な企業からのお声がけ」と感じられるか、「個人情報を使って追いかけられている」と感じられるかは、クリエイティブの設計と頻度管理によって大きく変わります。

金融Web広告の活用事例7選

各広告の特性を踏まえたうえで、国内7社の実在事例を解説します。どの広告種類をどのような課題に対して活用したかを読み解くことで、自社の広告設計の参考にしてください。

事例①ライフネット生命|顕在層と潜在層を両方カバーする統合設計

ライフネット生命保険株式会社は、2008年の設立当初から「インターネット完結型の生命保険」を事業モデルの核に据え、リスティング広告・SEO・コンテンツマーケティングを組み合わせたデジタル完結型の顧客獲得設計を実践してきた国内の先行事例です。

公式X(@lifenetter)でのオーガニック発信と、「生命保険 比較」「定期保険 安い」等のリスティング広告の組み合わせにより、「ネット生保」という新カテゴリの認知拡大を担ってきました

出口治明創業者の著書・テレビ出演・メディア掲載を活用したブランドコンテンツと、検索広告・コンテンツSEOを統合した設計は、「創業期からデジタルを主チャネルにした生保会社」の先行事例として業界で広く参照されています。

リスティング広告が「今すぐ比較・申込みたい人」へのアプローチだとすれば、コンテンツSEOは「保険ってそもそも何?なぜ必要?」という段階から関心を持ち始めた人との接点を作る仕組みです。両方を組み合わせることで、検索広告だけでは届かない「まだ検討を始めていない層」にも情報を届け、信頼関係を築いてから申込みへ導くこの二段階の設計は、生命保険に限らず住宅ローン・NISAなど判断に時間がかかる金融商品全般に応用できます。

ファイマケ代表 苛原寛

ライフネット生命が興味深いのは、「安い」という価格訴求を軸にしながら、コンテンツ(創業者の思想・保険の仕組み説明・Q&A)で信頼を積み上げるという二軸設計を創業期から持っていた点です。
2008〜2010年頃、業界内では「ネット生保」という言葉がまだ懐疑的に受け取られていた時期がありました。それが10年以上で生命保険の一大カテゴリとして定着したのは、リスティング広告で「今すぐ検索している層」を捕まえながら、コンテンツSEOで「これから検討する層」との接点を作るという二軸設計があったからだと感じています。「リスティングだけ」から次の一手を考えているご担当者にとって、ライフネット生命が創業期から実践してきたこの二軸設計は、具体的なイメージを作るうえで参考になるはずです。

事例②アクサダイレクト生命|ダイレクト型生保のリスティング先行戦略

アクサダイレクト生命保険株式会社は、代理店を介さない「ダイレクト型生命保険」という新カテゴリを日本市場に定着させた先行事例として業界で広く知られています。「死亡保険 安い」「定期保険 比較」等の価格比較系の検索KWへのリスティング広告で検討層を獲得しながら、ディスプレイ広告でのリマーケティング・テレビCMとデジタル広告を連動させた統合キャンペーンを展開してきました。

特徴的なのは、「ダイレクト型生保」というカテゴリ名そのものをリスティングKWとして早期から押さえ、新カテゴリのリーダーポジションを確立するという戦略設計です。競合他社が参入する前にカテゴリ名での検索を押さえることで、「ダイレクト型生保といえばアクサ」という認知を形成してきた、リスティング広告における先行者優位の活用例です。新商品カテゴリを市場に浸透させる際に、カテゴリ名そのものをKWとして先占する発想は、銀行・証券・保険を問わず新サービスを打ち出す際に参考になります。

また、公式サイトにQ&A・保険種類の比較説明・保険料シミュレーターを充実させ、比較検討段階のユーザーをサイト内で引き止める設計も組み合わせています。「代理店がいない分、サイト自体が営業担当の役割を果たす」というダイレクト型モデルの広告設計として、リスティング広告とコンテンツを一体で設計することの重要性を示す事例です。

事例③auじぶん銀行|auエコシステム連動のターゲティングディスプレイ広告

auじぶん銀行株式会社は、KDDIのauエコシステム(携帯電話・電気・ショッピング・各種サービス)と連動したターゲティング広告設計が特徴的な事例です。

「au携帯ユーザーで住宅ローンを検討中の30〜40代」「auでんきユーザーでNISAを始めたい人」等、auのサービス利用データと銀行の金融ニーズを組み合わせた精緻なターゲティングが可能な設計であると考えられます。「auじぶん銀行に乗り換えるとポイント還元率がアップ」「au PAYとの連携でお得」という独自のバリュープロポジションを訴求するディスプレイ広告を展開しています。

公式X(@jibunbank)でのオーガニック発信と組み合わせて、「auユーザー向け金融サービス」という一貫したメッセージを複数チャネルで展開しているのが、単体の広告種類を超えた統合設計の参考になる事例です。

ファイマケ代表 苛原寛

auじぶん銀行の設計で注目すべきは、「既存の顧客データ(auのサービス利用履歴)と金融ニーズを組み合わせたターゲティング」という発想の転換です。多くの金融機関は「広告媒体が提供するターゲティング機能の範囲内」で設計を組みますが、自社グループの顧客データを連動させることで、より精緻なリーチが設計できる可能性があります。「自社が持っているデータ資産」と「広告配信の設計」を掛け合わせるという視点は、銀行・証券・保険グループを問わず参考にできる発想です。ただし、顧客データの広告活用には個人情報保護法の観点から慎重な判断が必要であることは言うまでもありません。

事例④SBI証券|広告XとSNS広告のコンテンツ連動

SBI証券株式会社は、NISA口座開設数で業界トップクラスのポジションを持つネット証券であり、公式X(@SBISEC)でのオーガニック発信と、NISA口座開設訴求のSNS広告を組み合わせた設計を展開しています。

「NISA 口座開設」「積立投資 はじめ方」等のタイムリーなKWでのリスティング広告と、X広告・Meta広告でのNISA認知拡大を組み合わせることで、2024年のNISA制度拡充という追い風もあり、大規模な口座開設獲得につながっています。

公式XはNISA・投資情報の発信を継続しており、コンテンツへの共感・引用を通じたオーガニック拡散と、ペイドのSNS広告(リスティング連動のSNS広告での再アプローチ)を組み合わせた設計が参考になります。

事例⑤楽天証券|楽天グループのデータと連動したSNS広告展開

楽天証券株式会社は、「楽天ポイントで投資ができる」という他社にはない独自の訴求軸を核に、SNS広告・ディスプレイ広告・LINEキャンペーン広告を組み合わせたデジタル広告設計が特徴的な事例です。
楽天経済圏(楽天市場・楽天カード・楽天銀行・楽天保険)との連動を前提に、「投資をはじめてみたいが特別な動機がない」という潜在層に対して、「普段の買い物で貯まったポイントから始められる」という低い心理的ハードルを訴求することで、他社との差別化を図っています。

「楽天カードユーザー」「楽天市場の頻繁利用者」という楽天グループ内の既存顧客データと金融ニーズを掛け合わせたターゲティングで、NISA口座開設・投信積立のCPA改善を図る設計は、2024年のNISA制度拡充という追い風とも重なり、大規模な口座獲得につながったと考えられます。

グループ企業の顧客データ資産と広告ターゲティングを連動させることで、媒体が提供する標準機能以上の精度でリーチを絞るこの設計は、銀行グループが保険・証券子会社の広告設計に本体の顧客データを活用する際にも応用できる考え方です。

ファイマケ代表 苛原寛

SBI証券と楽天証券の事例を並べると、共通して見えてくるのが「オーガニックコンテンツと有料広告の統合設計」です。SNS広告だけ打っても、公式アカウントのオーガニック投稿がなければ、広告をクリックしてプロフィールを見たユーザーが「この会社は大丈夫か」と不安になる可能性があります。
逆に、オーガニック投稿だけでは認知拡大に時間がかかりすぎてしまいます。
SNS広告とオーガニック投稿を相互補完で設計することが、金融機関のSNSマーケティングの実効性を大きく左右する傾向があります。
私がファイマケで金融機関のSNS支援をする際、「まず公式アカウントのコンテンツ品質を上げてから、SNS広告を起動する」という順序を推奨しているのも、この観点からです。

事例⑥東京海上日動|代理店モデルにおけるリスティング×動画の役割分担

東京海上日動火災保険株式会社は、代理店チャネルが主体の損害保険業界最大手として、リスティング広告と動画広告を役割に応じて使い分ける設計を展開しています。「自動車保険 見積もり」「火災保険 比較」等の検索KWでのリスティング広告は「今すぐ見積もりを取りたい」という顕在層への直接アプローチとして機能し、公式YouTube「東京海上日動公式チャンネル」での企業CM・商品説明動画の運用とYouTubeのインストリーム広告は、まだ具体的な検討に入っていない潜在層へのブランド接触手段として位置づけられています。

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著者情報

苛原 寛のアバター 苛原 寛 株式会社ファイマケ 代表取締役

慶應義塾大学商学部卒。東京海上日動火災保険で3年間法人営業を担当した後に起業。金融機関のSNS運用代行やWebコンテンツ制作・マーケティング支援を専門におこなう。
制作に携わった金融コンテンツは1万件以上。Xフォロワーは8,000人超。1級ファイナンシャル・プランナーの資格を保有。
著書『選ばれる金融機関になるためのSNS戦略(金融財政事情研究会 出版)』

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