保険広告の規制と活用事例3選|禁止表現・媒体選定をプロが解説

「保険の広告を出したいが、どこまでの表現が業法上OKなのか分からない」「検索広告・SNS広告・動画広告のどれを使えばよいか整理できていない」「社内のコンプライアンス部門を通すために、どんな準備が必要か分からない」と悩んでいる保険業界の広告担当者の方も多いのではないでしょうか。

本記事では、金融業界に特化したSNS運用支援を行う筆者(ファイマケ代表・苛原寛)が、景表法・保険業法・媒体別ポリシーという3つの規制の基本から、検索広告・SNS広告・動画広告の広告手段別の設計ポイント、そして社内の稟議を通すためのステップまでを、アクサダイレクト生命・SOMPOダイレクト損害保険・ライフネット生命の3社の実例を交えながら解説します。

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この記事はこんな人におすすめ

・保険会社や代理店の広告を担当しているが、どの表現が保険業法に違反するか判断基準が分からない方
・自社の業態に検索広告・SNS広告・動画広告のどれが向いているか分からない方
・デジタル広告を始めたいが、社内の法務部門に何をどう説明すればよいか分からず前に進めていない方
・他社がどのような保険広告を展開しているか、具体的な事例を知りたい方

この記事を書いた人
苛原寛のアバター 苛原寛 株式会社ファイマケ 代表取締役

慶應義塾大学商学部卒。東京海上日動火災保険で3年間法人営業を担当した後に起業。金融機関のSNS運用代行やWebコンテンツ制作・マーケティング支援を専門におこなう。制作に携わった金融コンテンツは1万件以上。Xフォロワーは8,000人超。1級ファイナンシャル・プランナーの資格を保有。著書『選ばれる金融機関になるためのSNS戦略(金融財政事情研究会 出版)』

目次

保険業界が広告に注力すべき3つの理由

まずは保険業界が広告にに注力するべき主な理由を見ていきましょう。

①保険は能動的に調べなければ検討が始まらず、広告が検討の入口を作るため

日用品や飲食品と異なり、保険は消費者が「必要だと気づいたとき」にしか検討されません。「いつか加入しよう」と思いながら後回しにされやすく、何かしらの外部からの情報接触がなければ、具体的な検討に至らないまま時間が過ぎやすい商品です。

広告(テレビCM・新聞広告・交通広告・デジタル広告等)は、結婚・出産・住宅購入・定年退職などのライフイベントを迎えた消費者に「今が検討のタイミングかもしれない」という気づきを届ける役割を果たします。消費者が自ら検索を始める前に、正確な情報を持つ保険会社・代理店からの広告が先に目に触れることで、相談・見積もり先の選択肢に自社を加えることができます。広告への投資がなければ、積極的に保険を探していない潜在層との接点は紹介・口コミに限定されます。

②SNS上の詐欺的な勧誘が増える中、正規の広告発信が信頼の証になるため

警察庁の統計では、2025年のSNS型投資詐欺の被害総額は1,288億円・認知件数は9,523件にのぼり、2024年(871億円・6,413件)から引き続き増加しています。接触手段は「バナー等広告」が最多で、接触ツールはInstagramが最も多く、著名人の画像や動画を無断で使用したバナー等広告による被害の増加が顕著になっています。また、保険業界でも日本損害保険協会が、LINEオープンチャットやXを通じて「保険金を簡単に受け取れる」と誘い、保険金詐欺に加担させる手口への注意喚起を行っています。

詐欺的な広告と正規の広告が同じ媒体に混在している環境では、消費者が「この情報は本物か」を判断しにくくなっています。保険会社・代理店が正規の広告を発信することは、販売促進の手段にとどまらず、詐欺的な広告との判断の手がかりを消費者に提供する役割も果たします。

③来店型保険ショップ市場の拡大とともに、デジタル集客の重要性が増しているため

矢野経済研究所の調査によると、来店型保険ショップの市場規模(新契約年換算保険料)は2024年度2,173億円・2025年度予測2,232億円と拡大が続いています。市場の拡大は競合するショップ・代理店の数も増えることを意味します。消費者が保険を検討し始める段階でどのように自社を知ってもらうか、つまりデジタル広告やSNSでの情報発信が「来店・Web相談につながる最初の接点」として機能するかどうかが、集客の競争優位に直結しやすくなっています。

広告手段別の設計ポイント

保険業界で広告に注力すべき理由を踏まえたうえで、次は「どの広告手段をどう設計するか」という実務の話に移ります。

電通「2025年 日本の広告費」によると、金融・保険業種のマスコミ四媒体(テレビ・新聞・雑誌・ラジオ)広告費の約87.6%がテレビに集中しており、広告手段としてテレビ広告は有効です。一方でテレビ広告は、制作・放映に高額の費用と専門的な制作体制が必要であり、中堅・中小の代理店や来店型保険ショップが簡単に設計・運用できる広告手段ではありません。本記事では、規模を問わず設計・運用できるデジタル広告に絞って解説します。

本記事で取り上げるのは、検索広告(Google広告・Yahoo!広告)・SNS広告(Meta広告・LINE広告)・動画広告(TikTok広告・YouTube広告)です。業態や目的によって向き不向きがあるため、それぞれの設計ポイントを整理します。

検索広告(Google広告/Yahoo!広告)

Google・Yahoo!の検索広告(リスティング広告)は、消費者が「医療保険 相談」「生命保険 比較」等のキーワードを実際に検索した瞬間に広告が表示される仕組みです。SNS広告がまだ保険を意識していない人にも広告を届けるのに対し、検索広告は今まさに保険を検討して検索している人にだけ表示されます。このため他の広告手段と比べて、問い合わせや資料請求への転換率が高くなりやすい傾向があります。保険会社・代理店にとって費用対効果が高い広告手段の一つですが、保険業法上の禁止表現と媒体ポリシーの両方を広告文・LPで遵守する必要があります。

検索広告で押さえるべき設計ポイントは、以下2点です。

①キーワードの3分類設計
検索広告は、消費者がGoogle・Yahoo!等で検索したキーワードに応じて広告が表示される仕組みです。広告主は「どのキーワードで検索されたときに自社の広告を表示させるか」をあらかじめ設定します。この設定キーワードを以下の3種類に分けて設計することが、費用対効果を高める基本になります。

  • 指名キーワード(「[社名]保険」のように自社名を知っている人が検索)
  • 課題解決キーワード(「医療保険 相談」「保険 見直し」等の検討中の人が検索)
  • 除外キーワード(広告表示したくない検索ワードを設定し無駄な広告費を防ぐ)

この3分類を意識した設計をしないと、関係のない検索に広告が表示されて費用が無駄になる傾向があります。

②「どこから来た問い合わせか」の計測基準をウェブフォームの送信完了に統一する
問い合わせが電話で来た場合、どの広告が効いたかを正確に把握するのが難しくなります。資料請求フォームや相談予約フォームへの送信完了を「広告の成果1件」として計測する設計にすることで、どの広告がどれだけ問い合わせを生んでいるかが見えやすくなります。この設計により、広告の配信を自動で最適化する機能も働きやすくなり、深夜帯・週末帯の問い合わせも安定的に獲得できる傾向があります。

SNS広告(Meta広告)

Meta広告では、Facebook、Instagram、Messenger、Audience Networkなどに広告を配信できます。Meta広告では、18歳以上へのターゲット設定が保険サービス広告の要件として定められています。ターゲティング設定の基本は「年齢・性別・地域」に加え、「ライフイベント(結婚・出産・住宅購入等)」「インタレスト(保険・医療・資産形成等)」「カスタムオーディエンス(自社サイト訪問者・既存顧客リスト)」を組み合わせる設計です。

広告フォーマットは配信面によって異なります。例えば、Instagram面に広告を配信する場合、広告フォーマットはフィード広告・ストーリーズ広告・リール広告の選択肢があります。

Instagramは20〜40代のユーザー利用率が高く、特に全年代で女性の利用率が男性を上回る傾向があります。保険商品の主要な検討層である30〜40代女性への訴求に向いており、来店型保険ショップ・総合代理店の来店促進にInstagram広告が活用されています。来店型保険ショップは「相談予約フォームへの誘導」、保険会社は「見積もりページへの誘導」をコンバージョンポイントに設定する設計が一般的です。

SNS広告(LINE広告)

LINEは日本国内の月間利用者数が1億ユーザーを突破しており、年齢層が幅広いことから、来店型保険ショップ・代理店が一度接点を持った見込み客との関係を継続するのに適しています。

LINE広告(LINE Ads)は、LINEのトークリストや記事コンテンツ面に有料配信する広告です。保険の検討層に対してリターゲティング配信(過去に自社サイトを訪問したユーザーや既存の友だちリストに対して広告を再度表示する手法)や類似オーディエンス配信(既存顧客・自社サイト訪問者と似た属性・興味関心を持つ新規ユーザーに広告を配信する手法)が可能で、友だち追加を促進するフォロー広告も活用できます。

一方、LINE公式アカウントは広告配信の「受け皿」として機能するオウンドメディア的なチャンネルであり、「トーク画面下部にボタンを並べて『よくある質問』や『相談予約』に誘導する設計」「友だち登録後に段階的なメッセージを自動送信する仕組み」「LINE登録者にだけ提供する限定情報を設ける設計」といった活用例が見られます。LINE広告で獲得した友だちをLINE公式アカウントで継続的にフォローする設計が、保険業界での一般的な組み合わせです。

動画広告(TikTok広告)

TikTokは10〜30代のユーザーが中心を占めるとされる動画プラットフォームで、保険に馴染みが薄い若い世代への認知獲得の入口として活用を検討する保険会社・代理店が増えています。

TikTok For Businessは18歳以上への広告配信が金融サービスの要件として定められています。広告フォーマットはTopView(アプリ起動時に全画面表示)・インフィード広告(フォローページに表示)・スパーク広告(既存のオーガニック投稿を広告として配信)等があります。スパーク広告はオーガニック投稿の実績(再生数・コメント)を引き継いで広告配信できるため、まずオーガニック投稿でコンテンツ実績を積んだうえでスパーク広告に移行する流れが、現実的な進め方として選ばれやすい傾向があります。

動画広告(YouTube広告)

YouTubeはGoogleが運営する動画プラットフォームで、TikTokと比べて幅広い年齢層に利用されており、保険の主要な検討層にもリーチしやすい特性があります。数秒程度のショート動画から数十分の長尺動画まで公開できるため、「がん治療にかかる費用の実態」「ライフステージ別の保険の考え方」といった、複雑な保険商品を丁寧に説明する教育コンテンツを蓄積する場として機能します。有料広告としては動画の再生前後に表示されるインストリーム広告(視聴者が動画を再生した際に自動で流れる広告)を活用でき、Google広告と連動したリターゲティング配信(過去に自社サイトを訪問したユーザーや自社動画を視聴したユーザーに対して広告を再度表示する手法)も可能です。

保険商品は内容が複雑で、短い広告だけで申込まで誘導するのが難しい商品です。YouTube広告(インストリーム広告・バンパー広告等)は、「動画で先に知識・気づきを提供し、関心が高まった視聴者にリターゲティング広告で訴求する」という2段階の設計と組み合わせると効果的です。Google広告と連動することで、過去に自社サイトを訪問したユーザーや自社動画を視聴したユーザーへの再訴求も可能です。なお、自社チャンネルへの教育コンテンツ蓄積(オーガニック投稿)はYouTube広告の受け皿として機能しますが、コンテンツ公開だけでは見込み客への積極的なリーチは限定的であり、広告(有料配信)との組み合わせが集客効率を高めます。

保険広告の活用事例3選

広告手段別の設計ポイントを踏まえたうえで、各社がどのように広告を設計しているか、3社の実例を紹介します。

活用事例①アクサ生命|社名を知らない人にも届けるキーワード設定

アクサ生命(旧アクサダイレクト生命)はGoogle検索広告を活用し、「アクサダイレクト生命」「医療保険」といった指名・一般ワードから、顧客の潜在ニーズに寄り添うキーワードへの転換を図りました。「糖尿病 医療」「医療相談」のように、保険を検討している人が実際に入力するキーワードでも広告を出すことで、社名をまだ知らない見込み客にも広告が届くようになり、新規問い合わせ獲得の母数が広がっています。集まったデータを分析することで「長く付き合える優良顧客」の傾向が把握でき、広告配信の自動最適化と組み合わせることで契約数・保険料収入の継続的な改善につながっています。

このキーワード設計の考え方は業態を問わず応用できます。保険会社であれば「社名+商品名」だけでなく「がん 治療費」「育児休業 収入」など加入動機となる不安ワードへの拡張が有効です。代理店はそもそも指名検索が発生しにくいため、潜在ニーズのキーワードが主戦場になります。FP法人であれば「老後 資金計画」「住宅ローン 見直し」のような保険と隣接するライフイベントワードから入口を設計することができます。

活用事例②SOMPOダイレクト損害保険|デジタル広告へのシフトで「検討層」への接触が可能に

SOMPOダイレクト損害保険が販売するネット型自動車保険「おとなの自動車保険」は、マス広告中心の戦略からMeta広告(Facebook・Instagram)を主軸とするデジタル広告へのシフトを進め、ネット型損保市場で業界2番手の地位を獲得するまでに成長しています。

ネット型損保はブランド認知がなければ申込に至りにくい一方、テレビCMは費用対効果の測定が難しくコスト負担が大きくなる傾向にあります。一方で、Meta広告はユーザーの属性・行動データを活用したターゲティングができるため、「保険を検討しているタイミング」に近いユーザーへの配信が可能です。デジタル広告への軸足の移行により、テレビCM単独では捉えにくかった検討層への接触が可能となりました。

活用事例③ライフネット生命YouTube動画広告の2段階設計

ライフネット生命は、YouTube動画広告を2段階で設計し、大きな成果を出したと公表しています。

まず、最初の動画広告では、「保険リスクへの注意喚起」をテーマにした内容を配信しました。まだ保険を真剣に検討していない層に対して、「何かあったときの備えが必要かもしれない」という気づきを先に届けることが目的です。この段階では商品を前面に出さず、視聴者の潜在的な不安に寄り添う設計になっています。動画は全24パターンを制作し、ユーザー属性ごとに届ける内容を細かく変えることで、関連性を高めています。

次に、第1段階の動画を視聴したユーザーに絞って、ライフネット生命の具体的な商品を訴求するリターゲティング広告を配信しました。「すでに保険リスクへの関心が生まれている人」に的を絞った再訴求であるため、広告の無駄打ちを減らしながら申込につながりやすい状態のユーザーにアプローチできます。

この事例のもう一つの重要なポイントは、KPIの設定です。「ページ訪問数」をKPIにすると、訪問はしたが申込に至らないユーザーも含めてカウントしてしまいます。ライフネット生命は「見積りボタンのクリック」を計測基準にすることで、「実際に申込を検討している行動」との距離を縮めたKPI設計を実現しました。結果として保険加入意向194%かつCPA(顧客獲得単価)48%を達成されたそうです。

ファイマケ代表 苛原寛

ライフネット生命の事例から学べるのは「まだ保険を調べていない人に、最初から商品を売ろうとしない」という設計です。YouTube広告の第1段階で「リスクへの気づき」を提供し、リターゲティングで初めて自社の商品を語る構造は、保険業法第300条の断定表現・比較表示を避けながら動画を使う場合の現実的な設計の一つです。
KPIを「ページ訪問」ではなく「見積りボタンクリック」にした点も、稟議書での説明を数値で裏付けやすくする工夫として参考になります。

保険広告の「3つの規制」を理解する

設計と事例を踏まえたうえで、広告を実施する際に同時にクリアしなければならない3つの規制を整理します。どれか1つをクリアすれば残りが免除されるわけではなく、3つを同時に満たす設計が必要です。

規制①景品表示法のステマ規制

景品表示法のステマ規制では、事業者がインフルエンサー等に依頼して「自主的な口コミ」を装った投稿をさせることを禁止しています。「#PR」「#広告」「[社名]提供」等の明示が最低要件です。

インフルエンサーが「自分が実際に使って良かった保険」という体裁で商品を紹介していても、保険会社・代理店から報酬や商品の提供を受けてPR投稿を依頼されている場合は、その事実を投稿内に明記しなければなりません。

規制②保険業法第300条第1項(禁止行為)

保険業法第300条第1項では、保険会社・代理店の広告・勧誘行為に関する禁止事項を規定しています。SNS広告・検索広告・LP(ランディングページ)の文章など幅広く適用されます。特に広告設計で問題になりやすい3点を下表で整理します。

保険業法第300条第1項 主要禁止行為と禁止表現リスト

号数禁止内容代表的なNG表現例
第4号特別利益の提供禁止「フォロワー限定キャッシュバック」「加入でギフト券プレゼント」「紹介者に現金バック」
第6号不当な比較表示「A社の保険料より○○円安い」「業界最安水準」「他社より圧倒的にお得」
第7号断定的判断の提供「将来必ず○円受け取れます」「絶対に損しない保険です」「100%資産が増える」

規制③媒体別広告ポリシー(Meta・TikTok等)

Meta広告(Instagram・Facebook)・TikTok For Businessには、保険会社・代理店向けの独立した審査カテゴリが存在します。代表的な要件を以下に整理します。これらのポリシーは随時更新されるため、定期的な確認が必要です。

媒体保険会社・代理店向けの主な追加要件
Meta広告(Instagram・Facebook等)保険サービスの広告は18歳以上をターゲットに設定する必要がある
TikTok For Business「金融サービス」として審査対象となり、広告は18歳以上に制限される

「インフルエンサー×保険広告」は景表法・保険業法の両方を確認する

インフルエンサーを活用した保険プロモーションは、規制①(景表法のステマ規制)と規制②(保険業法の勧誘規制)を同時にクリアする設計が必要です。

チェック項目確認内容
景表法対応(規制①)「#PR」「#広告」「[社名]提供」のいずれかを投稿に明記しているか
保険業法対応(規制②)投稿内容が第4・6・7号に抵触しないか。インフルエンサーが個別の申込誘導を行っていないか

「#PRを付ければ十分」という理解は不完全です。#PRは景表法への対応であり、保険業法の禁止行為チェックは別途必要です。

保険広告の稟議を通す5ステップ

保険業界で広告運用を始めるにあたって最大の壁になりやすいのは、規制そのものではなく社内の承認プロセスにあるケースが多い傾向があります。以下の5ステップで進めることで、承認スピードと通過率が上がる傾向があります。

ステップ1「言わないことリスト」をコンプライアンス部門と先に合意する

稟議を通す際の最初のつまずきポイントは、「この表現は業法上どうか」という個別確認を毎回繰り返すことです。有効な打開策は、「言わないことリスト」をコンプライアンス部門と最初に合意してしまうことです。

<言わないことリストの一例>

カテゴリ言わないこと根拠条文
比較表示「A社より○○円安い」「業界最安水準」保険業法300条1項6号
断定表現「必ず○円受け取れます」「絶対に損しない」保険業法300条1項7号
特別利益「フォロワー限定キャッシュバック」「加入でギフト券プレゼント」保険業法300条1項4号
ステマインフルエンサー投稿への「#PR」未記載・依頼関係の隠蔽景表法5条3号告示

このリストを代理店や広告担当者が共同で作成し、コンプライアンス部門の承認を得ることで、以降の個別確認の回数を大幅に削減できる傾向があります。

ファイマケ代表 苛原寛

コンプライアンス部門が不安に思うのは「何が含まれているか分からない」ことです。「これは言いません」を表で先に提示すると、確認の判断軸が「許可できるかどうか」ではなく「型の範囲内かどうか」に変わる傾向があります。保険業法が縛っているのは「商品の優位性の断定」であって、「お金の不安に答える」「ライフプランを語る」「相談員の人柄を見せる」ことは一切縛られていません。「何を言わないか」の型化が、稟議突破の実質的な出発点だと感じています。

ステップ2稟議資料の枠組みを整備する

稟議資料の構成は会社・業態によって異なりますが、「目的・達成基準・予算試算・コンプライアンス確認の根拠」の4点を押さえておくと、承認者が判断しやすい資料に近づく傾向があります。この枠組みを媒体が変わっても使い回せる形で整備しておくと、新しい媒体を追加するたびに一から稟議書を作り直す手間を省けます。

  • 目的:問い合わせ獲得・ブランド認知・新規顧客開拓・既存顧客フォロー・商品告知など、「何のために広告を出すか」を自社の優先順位に合わせて設定する。
  • 達成基準:「3ヶ月で問い合わせ○件」「来店予約○件」「1件あたりの獲得コスト○万円以内」など、投資判断基準となる数値を事前に合意しておく。達成基準を設けると「何をもって成功・失敗とするか」が承認者・担当者間で共有でき、追加予算や方針転換の判断もしやすくなる。
  • 予算試算:初期テスト期間(1〜3ヶ月)の試算額と、本格運用時の想定月額をセットで示す。
  • コンプライアンス確認の根拠:「言わないことリスト(ステップ1)」の確認済み証跡、媒体側の審査要件への対応状況(詳細はステップ4)を添付する。

ステップ3「型承認」で個別審査を効率化する

大手生保・損保では広告・SNS投稿が「募集文書」として審査対象になります。「このフォーマットとこのコンテンツカテゴリの組み合わせは毎週繰り返す」という定型を先に審査・承認しておく「型承認」の仕組みを作ることで、個別投稿ごとの審査を簡略化できます。

ステップ4LP要件を媒体の審査基準に合わせて整備する

広告審査が落ちる原因の多くは広告文ではなく、リンク先LPの要件不足です。保険業法上の表示要件と媒体ポリシーの要件をまとめてLPに反映しておくことで、広告審査のやり直し回数を減らせます。

<LPに必要な最低限の掲載事項>

  • 保険業免許番号または保険代理店登録番号
  • 取り扱い保険会社名
  • 変額・外貨建て商品の元本変動リスクの明示(該当する商品の場合)
  • 問い合わせ先・所在地情報

ステップ5小規模テストで先にデータを取り、実績で本格稟議を通す

大型予算での本格稟議は社内承認ハードルが高くなりやすい傾向があります。稟議突破のための現実的な順序は、小規模テストを先に走らせ、そのデータで本格予算の稟議を通すことです。

<推奨する進め方>

  • まず月予算5〜10万円・期間1〜3ヶ月の小規模テストを設計し、どのくらい問い合わせが取れるかを確認する。
  • テスト期間の結果(問い合わせ件数・1件あたりにかかった広告費・クリック率等)を数値でまとめ、次の予算申請の根拠として使う。
  • テストで得た実績をもとに、月予算30〜100万円規模への拡大を社内申請する。
  • 「競合他社がすでに同様の広告を出稿しており、着手しなければ見込み客を取られ続けるリスクがある」という視点を稟議書に添えることも、社内検討の材料として有効な場合があります。

保険広告に強い代理店を選ぶ5つのポイント

ここまで規制・媒体設計・稟議の流れを解説してきましたが、「自社でここまで対応するのは難しい」「専門性のある外部パートナーに委託したい」という判断をするケースも多くあります。コンテンツ制作・媒体運用・コンプライアンス折衝を外注する場合、相手が保険業法を本当に理解した代理店かどうかが成否を左右します。

保険業界の広告を外部の代理店に依頼する場合、「実績があるか」「費用はいくらか」という基準だけでは不十分です。保険業法・景表法・媒体ポリシーの3つの規制を同時に把握した代理店かどうかを、以下の5点で確認することをお勧めしています。

①保険業法第300条の条文内容を即答できるか

「保険業法第300条1項の禁止事項のうち、SNS広告で特に注意が必要な内容を教えてください」という質問を初回ヒアリングで投げてみることをお勧めします。条文番号・具体的なNG表現・自社の確認フローをセットで説明できる代理店は、業法を業務設計に組み込んでいる可能性が高い傾向があります。

②Google「金融サービス」ポリシーの最新版を追っているか

Googleの金融広告ポリシーは年2回程度アップデートが入る傾向があります。「直近の改定内容と、LP上で現在必要な掲載事項を教えてください」という質問で、ポリシーキャッチアップの体制を確認できます。

③インフルエンサー起用の際に景表法と保険業法の両方を確認するフローを持っているか

「インフルエンサーへの依頼書面に保険業法上の表現制限を組み込んでいますか」という質問で、景表法と保険業法への対応力を確認できます。「#PRを付ければOK」という回答のみの代理店は、保険業法側の確認が不十分な可能性があります。

④稟議書の作成に関与できるか

「過去に保険会社・保険ショップの広告稟議書の作成に関与したことはありますか」という質問で実務経験を確認します。稟議資料の設計から一緒に動ける代理店かどうかで、運用開始までの期間が数ヶ月単位で変わる傾向があります。

⑤委託先管理規程・反社確認書・NDAを即提出できるか

大手生保・損保が外部代理店と契約する際、コンプライアンス部門からこれらの書類提出が求められるケースが標準化しています。書類が整備されている代理店かどうかを初回ヒアリングで確認しておくと、契約フェーズでの手戻りを防げます。

保険の広告運用代行はファイマケへ

「保険業法に対応できる広告代理店が見つからない」「コンプライアンス審査で差し戻しが続いて運用が止まっている」「SNSを始めたいが、どこから手をつければいいか分からない」、保険会社・代理店・ショップからのご相談の多くはこうした課題から始まります。

ファイマケは、金融業界に特化したSNS運用・広告支援を行っています。代表の苛原寛はFP1級資格保有・東京海上日動火災保険での法人営業3年のバックグラウンドを持ちます。金融コンテンツ制作実績は累計1万件以上にのぼり、銀行・信用金庫・証券・FP・保険会社・保険代理店の各カテゴリにわたる支援実績があります。

「保険業法上の禁止表現をゼロから整理したい」「稟議資料の設計から一緒に考えてほしい」「代理店に依頼する前に壁打ちしたい」など、どのような段階でもお気軽にご相談ください!

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著者情報

苛原 寛のアバター 苛原 寛 株式会社ファイマケ 代表取締役

慶應義塾大学商学部卒。東京海上日動火災保険で3年間法人営業を担当した後に起業。金融機関のSNS運用代行やWebコンテンツ制作・マーケティング支援を専門におこなう。
制作に携わった金融コンテンツは1万件以上。Xフォロワーは8,000人超。1級ファイナンシャル・プランナーの資格を保有。
著書『選ばれる金融機関になるためのSNS戦略(金融財政事情研究会 出版)』

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