銀行のマーケティングにおけるAI活用事例4選|生成AIで変わるコンテンツ制作・データ活用・コンプライアンス対応をプロが解説!

「AIを使うことで顧客対応やマーケティングが楽になるらしいが、銀行法や金融商品取引法に触れないか自分では判断できない」「他行のAI活用事例を調べても、業務効率化の話ばかりでマーケティングに使える情報が少ない」「AI活用を本部に提案したいが、材料が足りない」などといった声を、銀行のマーケティング・広報担当者からよく耳にします。実際にAIへ投稿文の下書きを作らせてみたものの、社内で誰に相談すればよいか分からず、結局お蔵入りにしてしまったという方も少なくありません。
本記事では、金融業界に特化したSNS運用支援を行う筆者(ファイマケ代表・苛原寛)が、メガバンク・地方銀行で実際に進む生成AIのマーケティング活用事例4選と、銀行法・個人情報保護法を踏まえた導入の進め方を解説します。
・AIを銀行のマーケティングに使ってみたいが、銀行法や個人情報保護法に触れないか判断できない方
・他行のAI活用事例を調べても、業務効率化の話ばかりでマーケティングに使える情報が見つからない方
・AI活用の企画を本部に提案したいが、事例や数値などの材料が足りない方
・銀行向けにAI活用の提案・運用支援を行う立場で、コンプライアンス上の注意点を事前に押さえておきたい方
なぜ今、銀行のマーケティングにAI活用が求められているのか
銀行のマーケティングにAI活用が求められている背景には、大きく3つの構造変化があります。
店舗網縮小・ROE重視による稟議の厳格化とAI活用の必要性
メガバンクは、店舗を減らしながらアプリやインターネットバンキングといった「対面以外の窓口」に顧客対応の軸足を移す取り組みを長年続けてきました。2024年以降はさらに一歩進み、「店舗を減らす」段階から「店舗がなくても顧客との接点をどう作るか」を考える段階に移ってきたと感じています。
こうした流れのなかで、銀行の個人向け部門では、ROE(自己資本利益率)が、経営上もっとも重視される数字の一つとなりました。その結果、マーケティングにかける予算も「この施策で利益にどれだけ貢献できるのか」という観点で厳しく審査されるようになり、「フォロワー数を増やしたい」というだけの企画では、社内の稟議が通りにくくなったという声を耳にします。
つまり、マーケティング施策には、収益への貢献を数字で説明することが以前より強く求められるようになっています。この「数字で説明する」ことの負担の大きさが、AIによって効率的にデータを分析し、効果を測定しようという動きを後押ししていると考えられます。AIの効果測定も、フォロワー数ではなく新規口座CAC(顧客獲得単価)やリテール部門ROEへの寄与で語れる設計にしておくことが、稟議突破の第一歩になると考えています。
異業種参入・ネット銀行台頭への対抗策としてのAI活用
異業種参入への危機感も、銀行がAI活用に踏み出す要因のひとつです。日本経済新聞の報道によれば、PayPay銀行・楽天銀行・住信SBIネット銀行・auじぶん銀行・ソニー銀行を含む主要ネット銀行各行合計の口座数は2024年3月期末時点で4,007万口座に達し、この5年で2倍に増加しました。預金・送金・決済の境界がぼやけ始めるなかで、「給与受取口座」「日常の家計アプリ」というポジションを取られ続けることへの危機感は、メガから地方銀行まで共通していると考えられます。
ネット銀行・異業種の強みは、アプリ上でのパーソナライズされた提案や対話型のサポートを、少ない人員体制のまま実現している点にあります。既存の銀行がこうした顧客体験に対抗するには、同じきめ細かさを人員増強だけで賄うのではなく、AIによって効率的に再現する必要性が高まっていると考えられます。
生成AIの実用化によるコンテンツ制作・パーソナライズの高度化
こうした環境変化のなかで、選択肢として現実味を帯びてきたのが生成AIの活用です。というのも、これまでは顧客データに基づくパーソナライズや、SNS・広告用のコンテンツ制作の質を高めようとすると、専任チームの増員や外部委託費用の積み増しが避けられませんでした。しかし生成AIの精度向上とコストの低下によって、投稿文・広告コピーの下書き生成や、取引データを踏まえた提案の優先順位付けといった業務を、既存の体制のまま内製で回せる可能性が出てきています。
次章以降で紹介する4社の事例は、こうした変化を先取りした動きだと捉えられます。
銀行のマーケティングでAIが担える4つの領域
銀行のマーケティングでAIが担える領域は、次の4つに整理できます。

①コンテンツ制作|SNS投稿文・広告コピーの下書き生成
SNS投稿文・広告コピー・提案資料の下書きをAIに生成させる領域です。「新規口座開設キャンペーンの告知文を3パターン出して」「住宅ローンの特徴を初心者にも分かるように説明して」といった指示を出すだけで、AIが複数パターンの文章を数秒で用意してくれます。
担当者はゼロから書く代わりに、いくつかの切り口を比較しながら反応が良さそうな表現を選ぶ、という進め方ができるようになります。営業担当者が持ち帰った顧客の声をSNS投稿のネタに変換したり、社内向けの企画書・提案資料の骨子を作らせたりする使い方も広がっています。
ただし、AIが担うのはあくまで下書きの生成であり、預金金利や手数料といった数字の正確性の確認、銀行法・景品表示法に照らした表現チェックは、人が最終判断すべき領域として残ります。
②一人ひとりに合わせた提案|取引データから興味・関心を予測する
普通預金の残高や振込履歴といった取引データ、Webサイト・アプリの閲覧履歴といった行動データから、「そろそろ住宅ローンに関心を持ちそうな人」「投資信託に興味がありそうな人」のように、顧客ごとの関心の強さをAIに予測させ、それぞれに合った案内を出し分ける領域です。
誰にどの案内を届けるかという線引きが適切かどうか、また個人情報保護法上、その使い方について本人の同意が取れているかどうかの確認は、人が最終判断すべき部分になります。
③顧客データをまとめて広告に活かす|属性ごとに広告を出し分ける
アプリの利用状況や取引履歴など、社内の複数システムに散らばっている顧客データを一つにまとめ、「投資信託を持っている人」「住宅ローンを検討していそうな人」のような属性ごとに、見せる広告を出し分けたり、広告の文言・デザインをAIに複数パターン作らせたりする領域です。
他行と比べて言い過ぎた表現になっていないかのチェックや、データを外部の業者と共有してよいかどうかの整理は、人が担う判断事項です。
④サイト・アプリ・SNSの反応を分析する|改善点を見つける
銀行のWebサイト・アプリ・SNS投稿がどれくらい見られ、どこで離脱されているかといった利用状況のデータを、AIに分析させる領域です。
「口座開設ページのどの入力項目で申し込みを離脱する人が多いか」「SNS投稿のうち、どのテーマ・時間帯の投稿がクリックや保存につながりやすいか」といった問いに対して、AIが大量のアクセスログ・行動データを読み込み、傾向をまとめて提示してくれます。人が手作業で集計・比較するには時間がかかる分析を短時間で終わらせ、「この画面を直せば離脱率が下がりそうだ」「この投稿形式を増やせば反応が上がりそうだ」といった改善の優先順位をつけてくれるイメージです。
分析結果をもとに、実際にどの施策を実行するか、どこまで予算をかけるかの判断は、最終的に人が担います。
ファイマケ代表 苛原寛前提として、AIが担うのは「生成」「分析」「一次対応」であり、銀行法・金融商品取引法に照らした最終判断は一貫して人が担う設計が基本になります。
銀行の担当者とお話ししていると、「AIに何を任せるか」より先に「AIに何を任せてはいけないか」を決めたがる傾向を感じます。慎重な姿勢自体は健全ですが、それだけでは検討が前に進みません。まずはコンテンツの下書き生成など低リスクな領域から「AI」と「人」との役割分担を実践し、実績を積んでから対象範囲を広げる順序をお勧めしています。
銀行のマーケティングにおけるAI活用事例4選
ここからは、銀行のマーケティングにおけるAI活用事例を4つ紹介します。
①三菱UFJ銀行|「エムット」によるAIコンシェルジュ・申込サポート
三菱UFJ銀行は2026年1月から段階的に、全行員約3.5万人がChatGPT Enterpriseを日常業務で利用できるようにするほか、リテール向けサービスブランド「エムット」を軸に、4つの取り組みを段階的に進めると公表しています。
1つ目は、MUFGアプリ内に搭載する「AIコンシェルジュ」です。利用者が持つ複数のMUFGアプリのデータを横断的に把握したうえで、質問に答えるだけでなく、使えば使うほど一人ひとりに合わせた提案をしてくれる仕組みです。発表会で公開されたデモでは、AIが「先月より食費が増えている」ことを自動で検出し、利用者が理由を尋ねるとカードの利用履歴を提示、コンビニでの利用が多い傾向を読み取って、ポイントが貯まりやすい提携店舗の利用を提案する、というやり取りが紹介されています。取引データから顧客の興味・関心を見つけ出し、関連する商品・サービスをおすすめするという、まさにマーケティングの一場面です。
2つ目は、申込専用AIチャット「エムットクイックスタート」です。特設ページを訪れた人に対し、AIが状況に応じてカードや証券口座などへの申し込みを案内し、複数のサービスをまとめて申し込めるようサポートします。「どれを選べばよいか分からず途中でやめてしまう」という申し込みフォームにありがちな離脱を、AIによる案内で減らそうとする取り組みで、新規顧客の獲得(コンバージョン)を高めるための、より直接的なマーケティング施策だといえます。
このほか、「Apps in ChatGPT」への連携や「Agentic Commerce」に対応し、ChatGPT 上で販売業者が連携する決済手段へのUFGの各種決済サービスの実装を目指すとしています。



全行員へのChatGPT Enterprise展開を先行させたうえで顧客接点への展開に進める順序は、AI活用を「まず社内浸透、次に顧客接点」という段階で進めるモデルとして、他行が投資の優先順位を検討する材料になると考えられます。
②りそなホールディングス|銀行業務支援AIツール「Data Ignition」
りそなホールディングスとりそな銀行は、ブレインパッドと共同開発したAI活用の銀行業務支援ツール「Data Ignition」を地域金融機関に提供しています。
「Data Ignition」は、必要なデータをAIに読み込ませるだけで、住宅ローンや積立投資信託といった金融商品に対する顧客のニーズをスコア化して予測する仕組みです。りそなグループの実務で活用効果があったAIをソフトウェアに搭載しているため、地域金融機関はニーズの高い顧客へ優先的にアプローチできるようになります。
静岡銀行・岩手銀行・きらぼし銀行等の地域金融機関が導入しており、自行単独でシステムを持たなくても外部提供という形でAI活用の恩恵を受けられる好例になっていると考えられます。



Data Ignitionのように「どの顧客に何を提案すべきか」をAIがスコア化して示す仕組みは、マーケティングの本質である『適切な相手に適切なメッセージを届ける』ことを、勘や経験だけでなくデータの裏付けをもとに実現する好例です。
地域金融機関への外部提供が始まっている点も注目に値します。自行だけでシステムを持たなくても、こうした共同基盤を活用する選択肢が現実的になってきたと感じています。
③ひろぎんホールディングス|内製AIモデルによる顧客ニーズの予測・スコア化
広島銀行を中核とするひろぎんホールディングスは、2022年にデータ利活用の高度化に向けた取り組みとして、AI分析モデルの内製開発に本格着手したと発表しました。2021年4月に専門組織を立ち上げ、日本IBMからのデータサイエンティスト出向による育成支援を受けながら、複数のAIモデルを自社で開発しています。
そのひとつが「ひろぎん証券マルチチャネルサービス申込予測モデル」で、広島銀行とひろぎん証券のデータを組み合わせ、証券サービスの提案を喜んでもらえそうな顧客をAIがスコア化して予測する仕組みです。グループ横断でデータを組み合わせたことによるシナジー効果を、有意な水準で確認したとされています。
外部ベンダーにモデル開発ごと委託するのではなく、支援を受けながら自社人材を育成し内製化を進めている点が特徴です。
④静岡銀行|地域金融機関初のSnowflake Cortex活用「生成AIチャットボット」
静岡銀行は、Snowflake・ブレインパッドと共同で、2024年より営業活動の高度化・効率化を目指す生成AIチャットボットの開発に着手しました。背景にあるのは、顧客のニーズが多様化・複雑化するなかで、営業担当者、とりわけ経験の浅い若手ほど、提案の準備に豊富な知識と時間が必要になっているという課題です。
このチャットボットは、新営業支援システム「S-CRM」に蓄積された過去の営業活動情報・顧客情報をAIに読み込ませ、「この顧客にはどのような提案をすれば関係を深められるか」を営業担当者に助言する仕組みです。若手担当者が経験不足を補いながら、準備にかける時間を短縮し、顧客一人ひとりに合った提案をできるようにすることを狙いとしています。
顧客データを扱うためインターネット環境から切り離した閉域環境でSnowflakeの生成AIサービス「Snowflake Cortex」を構築している点が特徴で、地域金融機関がSnowflake Cortexを活用するのは本事例が初とされています。



地方銀行のご担当者からよく伺うのは、「データはあるのに、いざセグメントを切ろうとすると毎回IT部門への依頼が発生して手が止まる」という悩みです。
ひろぎんホールディングスは外部の支援を受けながら自社でAI人材を育成し内製化を進め、静岡銀行は外部のデータ基盤を活用するという、異なるアプローチでこの壁を越えています。どちらの道を選ぶにせよ、大規模なシステムを一から自前で構築しなければ始められない、というわけではないと感じています。
地方銀行・信用金庫でもできるマーケティングにおけるAI活用の始め方
ここまでの事例は、いずれも大手・準大手行による相応の投資規模の話です。「うちのような中小の金融機関には関係ない」と感じた方も多いのではないでしょうか。しかし、マーケティングにおけるAI活用の本質は投資規模ではなく「AIに何を任せ、何を人が担うか」という役割分担の設計にあります。中小規模の銀行・信用金庫でも、次のような一歩から始められます。
なお、信用金庫の場合は地区制限・会員資格制限があるため、SNSでの広域リーチが「営業エリア外への意図せざる勧誘」にならないよう配慮が必要です。まずは既存会員・地区内向けの簡易セグメント分けから着手するのが現実的です。


①投稿・広告文の切り口比較から着手する
SNS投稿文・広告文の構成案をAIに複数パターン出させ、反応が良さそうな切り口を比較検討することから着手しやすいといえます。着手ハードルが低く、社内の合意形成も比較的取りやすい領域です。
②既存顧客データの簡易セグメント分けから着手する
大規模なシステム投資をしなくても、既存の会員データ・取引データをAIに読み込ませ、年代・利用商品などの切り口で簡易的にセグメント分けすることは可能です。
③外部提供が進むAI基盤の活用を検討する
Data Ignitionのように地域金融機関への外部提供が進んでいる仕組みを活用すれば、自行単独でシステムを構築しなくてもAI活用の恩恵を受けられる場合があります。
④面談記録・FAQ整理から着手する
営業担当者の面談メモや、窓口によくある質問をAIに整理させることで、コンテンツ制作のネタ出しやFAQページの充実に活用できます。



地方銀行・信用金庫のご担当者から「マーケティングにおけるAI活用は大手だけの話」という反応をいただくことがあります。ですが、投稿文の切り口比較のような低コストの一歩は、規模を問わず着手できます。まずは①②④のような自行の予算規模で再現できる着手ハードルの低い施策から始め、外部提供基盤の活用は次のステップとして検討する順序が現実的だと考えています。
銀行のマーケティングにおけるAI活用のリスク
AIをマーケティングに活用する際、銀行ならではの規制リスクと、運用面でつまずきやすいポイントがあります。ここでは特に押さえておきたい4つの観点を整理します。
優良誤認・比較表示のリスク
AIに「他行より有利」といった訴求コピーを生成させると、自行に都合の良い情報だけを強調し、比較広告として求められる公正さを欠いた表現になってしまうリスクがあります。
全国銀行公正取引協議会の「銀行業における表示に関する公正競争規約」は、預貯金等の必要表示事項・比較広告の必要表示事項・「公正に表示する」原則を具体化しており、自己の有利な点だけでなく他行の有利な点も公正に表示する義務を定めています。AIが生成するSNSの優位性訴求コピーを審査する際、この規約への抵触が指摘されるケースが多い傾向があります。
個人情報保護法とAIへのデータ統合活用のリスク
取引データ・行動データをAIのパーソナライズ・営業提案に用いる際、利用目的を特定・明示しないまま活用を進めると、個人情報保護法違反として行政指導の対象になるリスクがあります。
ひろぎんホールディングスのグループ横断AIモデルや静岡銀行の生成AIチャットボットのように、銀行・証券など複数の法人・システムをまたいでデータを統合活用する場合は、利用目的の特定・本人への明示が必須です。外部のデータ基盤・クラウド環境へ連携する場合は、第三者提供・委託の整理も欠かせません。
2024年9月改訂「顧客本位の業務運営に関する原則」
AIによるパーソナライズ配信は、成約率や反応率が上がりそうな顧客に商品を優先的に薦める設計になりがちです。しかし、それが本当にその顧客にとって適した商品かどうかまでAIが判断しているわけではないため、「反応が良さそうな人」への最適化が、顧客本位の原則が求める「その顧客にとって適切か」という視点とズレてしまうリスクがあります。
2024年9月26日改訂の「顧客本位の業務運営に関する原則」にプロダクトガバナンス補充原則が追加されて以降、商品組成・組成後の対応・分かりやすい情報提供までが原則の射程に入りました。AIが生成する提案文・SNS発信についても、この改訂を踏まえた社内審査基準の見直しが必要になると考えられます。この改訂を踏まえずにAIによる提案・発信を続けると、金融庁のモニタリング対象になったり、顧客からの信頼を損ねたりするリスクがあります。



銀行が保有する取引データは業界随一の量ですが、それだけにAIでの分析範囲を広げるほど、利益相反管理や個人情報保護法上の確認作業の重要性はむしろ増すと感じています。
基幹系・情報系のデータ分離という構造的な壁
銀行は取引履歴データの宝庫ですが、基幹系(勘定系)と情報系(CRM/MA/DMP)が物理的に分離されていて、リアルタイム連携には数年単位のシステム投資が必要となるケースが多いという構造的な事情があります。AIにどれだけ優れたパーソナライズ・分析能力があっても、データそのものが渡せなければ活用は進みません。
AI活用を検討する際は、システム部門を後から巻き込むのではなく、企画段階から同席してもらう設計が有効だと考えています。
銀行のマーケティングにおけるAI活用の社内稟議・体制構築の進め方
ここまで見てきたリスクや失敗パターンを踏まえたうえで、実際に社内稟議を通し、AI活用を運用に乗せるにはどのような体制設計が必要でしょうか。ここでは4つの実務的なポイントを解説します。
型をコンプライアンスと先に合意する
AIに文章を生成させても、投稿のたびに一からコンプライアンス審査を通していては、AIによるスピードのメリットが活きません。「この型の範囲内でAIに生成させたものは、個別審査を省略できる」という基準を、あらかじめコンプライアンス部門と合意しておく設計が、現場の運用継続性を担保する勝ち筋として効いています。
例えば投稿1件あたり3〜5部署の回付・3〜10営業日という重い稟議フローに対し、型の範囲内にあるAI生成コンテンツは月次一括承認で済ませるような運用にまで持ち込めれば、AIによる量産のペースと承認フローの重さとのミスマッチを緩和できると考えられます。
他行の普及実績を稟議のエビデンスにする
銀行の稟議では、他行の普及実績を外部エビデンスとして添えると、説得力が増す場合が多いという印象があります。例えば、Data Ignitionが複数の地域金融機関への外部提供まで進んでいるという事実は、稟議書に添付する外部エビデンスとしてそのまま使いやすい材料だと考えます。
AI同士の相互チェックによる一次スクリーニング
生成AIで文章を作成したあと、別のAIにコンプライアンス観点でのチェックを一次的に行わせ、人によるチェックの前段階でリスクの高い表現をあらかじめ絞り込む運用も広がりつつあります。
ただし、この一次スクリーニングはあくまで「見落とし防止の補助」であり、最終責任は人が持つという前提を崩さないことが重要です。
AI活用が定着している銀行とそうでない銀行の違い
ここまでの内容を踏まえ、実際にAI活用が定着している銀行と、定着していない銀行を比較すると、次のような違いが見えてきます。
定着している銀行は、AIを使い始める前に役割分担や運用ルールという「型」を決めているのに対し、定着していない銀行は、型を決めないままAIツールの導入そのものが目的になってしまっている傾向があります。
| 観点 | AI活用が定着している銀行(型を持つ組織) | AI活用が定着していない銀行(ツール導入が目的化する組織) |
|---|---|---|
| 役割分担 | AIが担う範囲と人が判断する範囲が明文化されている | 誰が最終責任を持つか曖昧なまま運用が始まる |
| 稟議の位置づけ | 設計段階からコンプライアンス部門が関与している | 稟議は「後から通せばよい」ものとして後回しにされる |
| データ活用 | CDP等の外部基盤を活用し部門間の壁を越える設計を持つ | 基幹系・情報系の分離を理由にデータ活用が止まる |
| 効果測定 | ROE・新規口座CAC等の経営指標に接続して測定している | フォロワー数など表面指標のみで成果を報告する |
自行が比較表のどちら側に近いか気になった方は、現状の体制を一度整理してみることをおすすめします。
銀行のマーケティングにおけるAI活用支援はファイマケへ
銀行のマーケティングにおけるAI活用は、今後さらに広がっていくと考えられます。一方で、「AI活用を提案したいが、銀行法・個人情報保護法上のリスクを自分では判断できない」「AIツールを導入したものの、基幹系と情報系のデータが分離していて活用が進まない」という声も多く聞かれます。
株式会社ファイマケは、金融業界に特化したSNS運用支援会社です。代表の苛原寛はFP1級資格保有・東京海上日動火災保険での法人営業3年・Xフォロワー約8,000人のバックグラウンドを持ち、AIが担う領域と人が最終判断すべき領域を切り分けたコンテンツ制作・SNS運用の設計を強みとしています。金融コンテンツ制作実績は累計1万件以上にのぼり、銀行・信用金庫・証券・FP・保険会社・保険代理店の各カテゴリにわたる支援実績があります。
「金融のことをわかっていない代行会社に頼んで、業法上の指摘で頓挫した」というリスクなく、マーケティングにおけるAI活用の企画段階から運用代行まで、どのような段階でもご相談いただける体制を整えています。どのような段階でもお気軽にご相談ください!








