【保険SNS担当者必見】保険会社・代理店のTikTok活用事例2選|業法と運用設計をプロが解説

「TikTokを担当することになったものの、『保険商品の話を直接できないのに何を投稿すればよいのか分からない』『コンプラに上げると毎回原稿が原型なく戻ってくる』『役員はバズれと言うが炎上は決して許容されない』——そんな悩みを抱えているSNS担当者・代理店経営者は少なくありません。
本記事では、金融業界に特化したSNS運用支援を行う筆者(ファイマケ代表・苛原寛)が、保険業界のTikTok活用事例を2つご紹介。さらに、保険業法第300条1項を踏まえた表現可否、4類型コンテンツ、成功させるポイント、社内承認とコンプラ対応まで網羅します。これから始める方にも、運用していて成果を実感できていない方にも、明日からの設計に役立てていただける内容です。
・保険会社のSNSを担当担当を任されたが、保険業法・募集規制を踏まえてTikTokで何を発信できるか分からない方
・保険業法を守りながらTikTokで成果を出す方法を知りたい方
・大手生損保のマーケティング責任者・広報部長で、KPI設計や稟議突破の材料を探している方
・金融に強いTikTok運用代行会社を比較検討している、保険業界・代理店のご担当者
なぜ今、保険業界がTikTokに取り組むべきなのか
保険業界とTikTok——一見ミスマッチに思えるこの組み合わせが、2026年に入って「無視できないテーマ」へ変わりつつあります。市場規模・若年層の情報接点・国内大手の参入状況、そしてリード獲得チャネルとしての成立可能性の4視点から、その理由を整理します。
TikTok月間MAU約3,300万人と「保険購入適齢期手前」の若年層接点
国内のTikTok月間アクティブユーザー数は約3,300万人と推定され、うち18〜24歳が約830万人を占めるとされています(2026年4月時点)。30代以上のユーザー増加も継続し、平均年齢は35.9歳まで上昇しているとの調査もあり(NTTドコモモバイル社会研究所等)、「TikTok=Z世代の遊び場」という固定観念は実態と合わなくなりつつあります。
ファイマケ自社調査(n=200/20〜70代消費者対象/2025年実施)では、金融商品を知るきっかけとして「SNS」が最多となりました。SNSで金融商品の情報収集をした経験がある人は77.0%、そのうち公式サイト訪問・資料請求など何らかの行動を起こした人は91.3%に達しています。この調査が20〜70代全体を対象にしている点が重要で、SNSが金融商品の認知接点として機能しているのは若年層に限らず、保険購入適齢期である30〜50代にも及んでいる可能性が高いと考えられます。
第一生命・明治安田生命・住友生命等がTikTok公式未参入という事実
チューリッヒ保険会社(@zurich_japan)・ほけんの窓口(@hokennomadoguchi)の公式アカウントは確認できる一方、第一生命・明治安田生命・住友生命・アフラック・かんぽ生命・東京海上日動・SOMPOホールディングス・三井住友海上といった主要プレイヤーは、YouTube・Instagram・Xの公式運用あるものの、TikTok公式アカウントはありません。
これは保険業界にとって「先行参入の余地が比較的残っているSNS領域」であることを意味する傾向があります。Instagram・YouTubeはすでに大手の参入が進んでおり、検索上位に食い込むのは容易ではありません。一方TikTokは、フォロワーゼロからでも初動の視聴完了率次第で拡散可能なアルゴリズム設計(2026年仕様)であり、後発参入でも短期で再生数を獲得できる構造的余地があります。「他社が始めたから」ではなく「他社がまだ来ていないから」という稟議文脈が成立しやすい局面です。
また、同じ金融業界に目を向けると、カード会社や証券会社ではすでに具体的な成果が生まれています。
三井住友カード(@smbc_card)は約6万フォロワーを持ち、明日真似したくなるお役立ち情報や面白動画を配信するというコンセプトのもと、ショートドラマやクリエイターとのコラボ動画を投稿しています。
新社会人の親子物語をテーマにしたショートドラマは2,053万再生、クリエイターとのコラボ動画も多いもので100万再生越えなどTikTokを通じた露出を図れています。
@smbc_card 「最初の1枚が肝心やねんから。」 主演:@⛈羽衣⛈ 父親役:重松隆志 #新社会人 #新卒 #親子 #三井住友カード #ショートドラマ ♬ オリジナル楽曲 – 三井住友カード【公式】
@smbc_card 4年目のカップル、みんなの周りにもいる? 出演者 @おすず @ユナサポアゴドリル #カップルあるある#大学生あるある#大学生の日常 #三井住友カード #SMCC #クレジットカード #ナンバーレス #Vポイント ♬ Sweatshirt – Patrick Hizon & EJEAN
@smbc_card みんなは何個当てはまった?? 出演者 @荒井瑠里 #夏休みあるある #大学生あるある #夏休み #三井住友カード #SMCC #クレジットカード #ナンバーレス #Vポイント ♬ Techno Phonk – lofi'chield
さらに2025年4月には、TikTok公式アカウントを起点にしたキャンペーンを3週連続で実施しました。①公式アカウントをフォロー②動画内のクイズをDMで回答③その場で当落通知というTikTok内で完結する設計で、最大10万円分のVポイントPayギフトを合計3万名に付与するという大規模なキャンペーンです。「カードを持っていない方でも応募可能」とすることで、非会員の若年層との接点獲得も同時に狙った設計になっています。
オーガニック運用でフォロワーを積み上げながら、キャンペーンでさらにフォロワー獲得と認知拡大を重ねるという多層的な活用が、三井住友カードのTikTok戦略の特徴といえます。
SBI証券は2022年9月に公式TikTok(@sbisec_smimi)を開設。資産形成について考えるきっかけになる動画を配信するというコンセプトのもと、主に「男子投資部の日々」や「モノイリ3姉妹」というシリーズもののショートドラマが投稿されており、動画の再生回数は100万回を超えているものもあります。ストーリーの中心は男子学生や10代・20代の3姉妹であり、若年層に「投資」を身近に感じてほしいというメッセージ性が感じられる内容です。
@sbi_sec 【男子投資部の日々】第6話 空気椅子 #部活 #部活あるある#学生#学生あるある #青春#動画コンテスト#投資初心者#投資#NISA#sbi証券#sbi #fyp#foryou ♬ オリジナル楽曲 – SBI証券【公式】
@sbi_sec お姉ちゃんのお金の使い道、どう思う? 【モノイリ3姉妹 第2話】 @midnight_ticket 出演: 青島心 横田未来 脚本:榊原顕 監督:木村悠人 撮影:原田恒太、荻原創 編集:山田達也 衣装:大野碧 ヘアメイク:nari 制作進行:長田弥楽乃 プロデューサー:koki kato 制作:株式会社DoFull 【ご注意事項】 金融商品への投資には手数料等を負担いただく場合があり、価格変動等により元本を割れる損失を被るおそれがあります。 商品毎に手数料等およびリスクは異なりますので、詳細は、SBI証券 WEBサイトの当該商品等のページ、金融商品取引法等に係る表示又は契約締結前交付書面等をご確認ください。 株式会社SBI証券(金融商品取引業者)関東財務局長(金商)第44号 加入協会:日本証券業協会 ———————————————— ■リンク HP:https://www.sbisec.co.jp/ETGate X(旧Twitter): https://x.com/SBISEC Facebook: https://www.facebook.com/sbisec/ LINE:https://lin.ee/dcnNq9s 投資情報の免責事項: https://search.sbisec.co.jp/v2/popwin/attention/trading/info_attention.html 金融商品取引法等に係る表示(リスク・手数料等): https://search.sbisec.co.jp/v2/popwin/info/home/pop6040_torihikihou.html ———————————————— #SBI証券 #投資 #ミッドナイトチケット ♬ 花に亡霊 – ヨルシカ
ファイマケ代表 苛原寛このようにすでに金融業界のSNS活用の「前提」が整いつつある中で、保険会社だけがTikTokに参入していないという状況は、裏を返せば「保険会社にとって最後に残された先行者優位の取りやすいポジション」ともいえます。銀行・証券・カード会社が若年層とのSNS接点を着々と構築している今、保険会社が動かないままでいることのリスクは年々大きくなっている傾向があります。
保険購入の検索行動とTikTok起点のリード獲得・面談予約導線
保険購入の意思決定は対面営業と長期検討が前提のため、「TikTokで動画を見た瞬間に申込フォームを送信する」という行動はほぼ起こりません。重要なのはTikTokを「契約完結のメディア」ではなく「リード獲得・面談予約のフロントエンド」として再定義することです。TikTok視聴 → 公式LP遷移 → 資料請求/LINE登録 → 面談予約 → 契約の多段階動線を設計し各段階を分離計測することで、対面営業の現場を毀損せずに増幅する道具として機能します。代理店経営者の「うちの営業に置き換わるのでは」という不安にも、この設計で先回りで応えられます。
「3年後に動く」では遅い——時間軸で迫る稟議文脈
3年後の2029年時点で、20代後半〜30代前半のミレニアル=いま保険購入適齢期に入りつつある層が、保険商品名でGoogle検索する文化は加速度的に痩せていくと考えられます。彼らがTikTok・Instagram・YouTubeで日常的に接触する「お金の話の発信者」が誰か——そこに保険会社・代理店の居場所がないまま3年経過した場合、新規顧客接点が構造的に細るシナリオは現実味を帯びます。「いま動くか、3年後に動くか」で、その時の獲得コストは桁違いに変わる——これが経営層に提示すべき時間軸の問いです。



保険業界がTikTokに取り組むべき本当の理由は、Z世代やミレニアルが「保険を能動的に検索しなくなった」ことにあります。私自身、東京海上日動で法人営業をしていた頃は、お客様の入口は紹介と電話がメインでした。今の20〜30代は、保険商品名でGoogle検索する前に、TikTokで「家計」「将来不安」「結婚 お金」というテーマの動画を見ています。彼らの認知の入口がすでに移動している以上、保険会社・代理店もそこに居場所を作らない限り、10年後の新規顧客接点は構造的に痩せていく傾向があります。
保険業法×TikTok広告ポリシー×社内コンプラの三重壁を越える方法
保険業界のTikTok運用が他業界と本質的に異なるのは、3つの規制レイヤーが同時に課される点です。保険業法、TikTok For Businessの金融サービスカテゴリ規制、そして社内コンプライアンス部門の運用——この三重壁をどう越えるかが、運用起動の可否を決めます。


第一の壁:保険業法第300条1項と表現可否マトリクス
保険業界TikTokの最大の出発点は、保険業法第300条1項です。TikTok投稿で抵触リスクが高いのは主に以下の各号です。
- 5号:不当な比較表示の禁止(「A社よりB社のほうがお得」等の優位性訴求)
- 6号:断定的判断の提供(「絶対増える」「必ず損しない」等/変額・外貨建商品で特に厳格)
- 4号:特別利益の提供(「フォロワー限定キャッシュバック」等の現金等価提供)
- 1号:重要事項の不告知・虚偽説明(保障内容の限定条件を省いた「これさえあれば安心」表現)
加えて、保険募集人の登録制度との関係も重要です。未登録個人がTikTokで「商品比較・推奨」を行うことは、対価関係や勧誘性の有無により「募集」と認定されるリスクが残ります。2026年6月1日施行予定の改正保険業法では「特別利益の提供」の対象が拡大される見込みのため、SNSタイアップ・キャンペーン設計時には従来以上の慎重さが要請される傾向があります。
実務上は、台本段階で以下の表現を「言わないこと」として先に決めておく設計が有効です。
| ❌使ってはいけない表現 | ✅推奨される言い換え |
|---|---|
| 必ず儲かる/絶対お得 | 〜になる傾向があります/〜と考えられます |
| 業界No.1/最も安い | 公的調査の数値ベース/約款記載の保障範囲に基づき |
| 他社より優れている | (事実数値の並記までに留める) |
| 100%安心/完全保障 | 約款記載の保障範囲に基づき〜 |
| TikTokで保険が売れる | TikTokを起点に面談・資料請求につながる事例があります |
第二の壁:TikTok For Business 金融サービスカテゴリの審査要件
TikTok For Businessは「金融サービス」を業種別ポリシー対象に設定しており、日本市場では金融庁・財務局の登録番号、保険会社・代理店としての登録証憑提出が要件化される傾向があります。加えて、対象年齢18歳以上限定配信、日本市場限定配信、断定的・優位性比較表現の禁止、リスク表記の必須化など、保険業法と整合する規制が広告クリエイティブにも課せられる傾向があり、審査時間は標準カテゴリより長くなる傾向があります。最新仕様はTikTok For Business金融サービス広告ポリシーの公式ページの確認を推奨します。
インフルエンサー起用時は、景品表示法のステマ規制(2023年10月施行)と保険業法の募集人規制が二重に関わります。「PR表記をつければよい」という単層の理解では足りず、「保険商品の比較・推奨を行う以上、募集人登録が必要か」という別レイヤーのチェックが必要になる傾向があります。
第三の壁:社内コンプラと保険TikTok投稿の承認フロー設計
国内大手生損保では、SNS投稿1本あたりの社内承認に1〜2週間、場合によっては1ヶ月かかることが珍しくない傾向にあります。広報→募集文書審査部→法務/コンプラ→必要に応じて商品・支払・数理部門の複眼チェック→役員稟議という多段階フローが、生命保険協会の各ガイドラインが示す枠組みとして一般化しているためです。
しかしTikTokのアルゴリズム(2026年仕様)は週3〜5本の高頻度投稿を要求するため、投稿都度の個別承認では構造的に追いつかない傾向があります。実務的な回避策は3つあります。
- 「型」を先にコンプラ承認させる:フォーマット・テロップ表現・CTAパターン等を「型」として事前承認し、個別投稿は同型運用で簡易承認に切り替える
- 月単位の一括承認フロー:月初に翌月分の投稿案を一括提出し、一度に承認を取る運用へ移行する
- 外注パートナーが事前審査基準を内在化した台本を提出する:金融業界知見のある代行がコンプラ通過要件を満たした台本を最初から納品し、内部審査時間を短縮する



保険業法第300条1項を盾にして「TikTokではほぼ何もできない」と諦める企業を、私はこの3年で何度も見てきました。しかし業法が縛っているのは「商品の優位性訴求」であって、「お金の不安に答える」「ライフプランを語る」「職員の人柄を見せる」ことは一切縛られていません。
法務・コンプラ部門は「悪役」ではなく、業界の信頼資産を守る門番であり、彼らが安心して承認できる「型」を先に作る発想こそが、保険TikTok運用起動の生命線になる傾向があります。コンプラ部門と敵対せず、彼らが安心して承認できる型を先に作る——これがTikTok運用の起動可否を分ける最大のポイントだと考えています。
商品紹介ができない前提で組み立てる、保険TikTokの4類型コンテンツ
「保険商品を直接訴求できないなら、何を投稿すればよいのか」——この問いへの実務的な答えが、4類型のコンテンツフレームワークです。TikTokのショート動画は、保険業法第300条1項の比較表示・断定的判断回避という制約のもとで、出口KPIごとに4つの類型に分けて設計するのが現実解です。自社リソースと目的から逆算して最初の1類型を選び切る発想が出発点になります。


類型①ブランディング型|保険TikTokの認知・好感度KPI
出口KPIはブランド純粋想起・好感度・指名検索数。代表例は、後述するチューリッヒ保険会社(@zurich_japan)の「気候変動・サステナビリティ」軸です。投稿フォーマットはCMの縦動画切り出し、キャラクターIP活用、企業姿勢メッセージが中心となり、保険業法第300条1項に抵触する余地が極小化されるため、社内承認も比較的通りやすい傾向があります。
類型②採用ブランディング型(応募者数・エントリー数KPI)
出口KPIは新卒・中途エントリー数、内定承諾率、採用単価。投稿フォーマットは「内定者の1日」「入社1年目FPの仕事密着」「支店長Q&A」「保険募集人試験合格までの3ヶ月密着」など、VLOG型・60秒前後が向きます。採用文脈は保険業法と直接の交点が少ないため、コンプラ通過のハードルが他類型より低い傾向があります。「業法ゆえにTikTok運用が起動できない」と感じている広報部が、まず採用ブランディング型から始めて運用ノウハウを蓄積するという順序設計も現実的です。
類型③ライフプラン教育型(フォロワー育成・LP送客KPI)
出口KPIはライフプラン相談予約・資料請求・LINE登録。投稿フォーマットは「20代の保険って何が必要?」「結婚したら見直す3つのこと」「年末調整・生命保険料控除の正しい書き方」「NISA・iDeCoと生命保険の優先順位」など、30〜60秒の教育動画が中核です。
設計上の鉄則は3つ。第一に特定商品名を出さないこと(業法300条1項の比較表示・断定的判断回避)。第二に「必ず」「絶対」「一番」を使わないこと。第三にCTAを「相談・資料請求」までに留めること(直接申込CTAは募集人登録要件との抵触リスク)。これらを守れば、保存率が他類型の2〜3倍程度に伸びる傾向があり、TikTokのアルゴリズム上でも評価されやすい類型です。ファイマケが伴走した運用案件のうち、教育型コンテンツの保存率は他類型の投稿より高い傾向があり(自社運用知見ベースの推定/代理店ヒアリング含む)、リード獲得チャネルとしての歩留まりも他類型より高めに出やすい傾向があります。
類型④来店誘導・面談予約型(来店数・面談数KPI)
出口KPIは店舗来店予約数、店舗別流入、オンライン面談予約数。投稿フォーマットは店舗体験動画、ダンスチャレンジ、キャンペーン告知が中心となります。来店という行動KPIに直結しているため、代理店経営者にとって導入動機を持ちやすい類型で、CM資産がある場合はTikTok縦動画への転用で新規制作費を抑えられる利点があります。



4類型のうち、自社がどこから入るかを最初に決めることが運用設計の出発点です。ブランディング型は大手の体力勝負、採用型は人事部の協力さえ得られればリソースが少なくても始めやすい、教育型はFP個人や代理店個人と相性が良く、来店誘導型は店舗チェーンに最適です。私たちが支援する中で最も多い失敗は「1社で4類型を最初から狙う」ケースです。リソースが分散して全類型が中途半端に終わる傾向があります。1類型に絞って3〜6ヶ月運用し、軌道に乗ってから次の類型を追加する順序を強く推奨しています。
保険業界のTikTok活用事例2選
①チューリッヒ保険会社|サステナビリティ軸のブランディング型
スイスを本社とする外資系損保チューリッヒ保険会社の公式TikTok(@zurich_japan)は、フォロワー約5,700人・いいね約6.3万(2026年4月時点)を獲得しています。2022年12月時点で同社ニュースリリースですでに公式運用が言及されており、損保系として比較的早期に公式運用を開始したアカウントの一つです。
最大の特徴は、「美しい自然を守りつなぐ/気候変動」というブランドメッセージを起点にした投稿設計です。「車やバイクで日本の美しい自然を巡る」を掲げ、商品から最も遠い切り口でTikTokを運用しています。



チューリッヒ保険会社の運用が損保系として優れているのは、「商品から最も遠い切り口でTikTokを始めた」点です。サステナビリティ・気候変動という普遍的テーマは、保険業法第300条1項が縛る「商品の優位性訴求」とは無関係であり、コンプラ承認も通りやすい傾向があります。
私が東京海上日動時代に痛感したのは、商品訴求から始めようとすると業法のチェックで投稿が止まる、ということです。チューリッヒのように「企業姿勢メッセージ」から入る設計は、大手損保にとって再現性の高いスタートラインだと考えています。
②三井住友海上プライマリー生命|インフルエンサー起用で若年層の認知を拡大
三井住友海上プライマリー生命は、変額年金保険「AHARA」の認知拡大を目的に、TikTokインフルエンサーを活用したプロモーションを実施しました。
最大の特徴は「音楽×保険」という異色の組み合わせです。SNSで人気を持つシンガーソングライター(@meg_ensaka/遠坂めぐ)とタッグを組み、「AHARA」をテーマにしたオリジナル楽曲を制作。インフルエンサー自身のTikTokアカウントへの投稿とSNS広告配信を同時に展開することで、フォロワー以外の若年層ユーザーへのリーチも狙えます。
保険商品は複雑で難解なイメージがつきまといやすく、特に若年層には「自分ごと」として受け取られにくい傾向があります。この事例が示すのは、商品説明を前面に出さずに「音楽」というエンタメコンテンツで認知の入口を作るという発想の転換です。



インフルエンサーを起用する際に、保険の説明をさせるのではなく「楽曲」という形でブランドを表現させた点が秀逸です。TikTokのユーザーは広告らしい動画をスキップしますが、好きなクリエイターの音楽であれば最後まで視聴する傾向があります。金融規制上「断言表現」が使えない保険商材において、コンプライアンスと拡散力を両立させる手法として非常に参考になる事例です。
保険TikTokを成功させる5つのポイント
ここまでの内容を踏まえ、実装段階で詰まりやすい5つの実務ポイントを整理します。マーケ責任者が稟議で問われる論点と、現場担当者の運用継続課題を同時に解消する設計です。


ポイント1:KPI設計はTikTokだけで完結させない
保険TikTokで失敗する企業の多くは、KPIを「再生回数」だけで測ろうとしています。ファイマケが支援する際は、TikTok起点 → LP遷移 → 資料DL → 面談予約 → 契約 → LTVの各段階を最初に分離計測する設計から始めます。さらに「半年で見える指標(再生・フォロワー)」「1年で見える指標(LP遷移・面談予約)」「2年で見える指標(契約・LTV)」と階層化することで、社内評価のタイムラインを長期化することも重要です。
ファイマケが支援する保険系案件では、TikTok起点 → LP → 資料DLまでの遷移率/LP → 面談予約までのCVRをそれぞれ独立に観測しており、リード獲得CPAを類型別に切り分けて管理する設計を標準化しています(自社運用知見・推定値)。
ポイント2:保険TikTokの投稿頻度は週3本以上を目安に、コンプラ通過遅延への備えが重要
TikTokのアルゴリズムは投稿頻度をリーチに直結させる仕様です(2026年4月時点)。週3本以上の投稿が運用継続の最低ラインですが、コンプラ承認に1ヶ月かかる体制では構造的に間に合わない傾向があります。実務的回避策は前述のとおり、「型を先に承認」「月単位の一括承認」「事前審査基準を内在化した外注パートナーの活用」の3点です。この3点が揃わないままTikTok運用を始めると、投稿頻度が週1本以下に落ち、3〜6ヶ月でアルゴリズム的に埋もれて運用停止に至るパターンが発生する傾向があります。
ポイント3:営業職員(生保レディ・代理店募集人)個人アカウントの統制ガイドライン
営業職員(生保レディ・代理店募集人)が個人アカウントで商品名・他社比較・割引を匂わせる発言を行い、コンプラ部門がガイドラインを後追いで整備するケースが業界内で増えている傾向があります。所属を名乗らずに発信していても、通報で会社の知るところとなり、会社の管理監督責任(保険業法第283条等)が問われるリスクが残ります。炎上リスクの統制という観点でも、ガイドライン整備は必須です。含めるべき要素は以下の4点です。
- 会社名乗りルール:「全面禁止」「事前承認制」「公式扱い」の3択を明文化
- 投稿前チェック範囲:業務関連投稿のみ/全投稿(PR系・私生活系含む)
- 退職時のアカウント取り扱い:投稿削除義務/会社名・社員名の差し替え義務
- 報酬・タイアップ表示:景表法ステマ規制(2023年10月施行)に基づき「広告」「PR」表記必須
ポイント4:保険代理店との利益相反を避ける運用設計
本部主導でTikTokを運用すると、TikTok経由の問い合わせを本部直営チャネルが拾ってしまい、地域代理店から「本部に契約を取られた」とクレームが来る構図があります。実務的設計は3つ。第一に、TikTok起点の問い合わせを郵便番号・住所で地域代理店に振り分けるコミットメントを社内合意化すること。第二に、地域代理店の支店長・募集人を出演させ「現場の顔」として共同運用化すること。第三に、代理店向け勉強会で「本社SNSと地域営業は補完関係」という社内合意を継続的に醸成することです。
ポイント5:保険TikTokの内製 vs 外注の判断軸
内製で必要な体制は、SNS専任2名以上+コンプラ常設窓口+撮影編集機材。これが揃わない規模では内製は現実的ではありません。外注で必要な要件は、金融業界知見・コンプラ通過実績・台本設計力。中堅生損保・代理店ではハイブリッド型(戦略・台本設計を外注/日次運用は内製)が現実解となるケースが多い傾向があります。
外注先選定で最も重要なのは、「金融業界の知見と保険業法・募集規制への理解を持つかどうか」です。金融業界外の代行会社の場合、台本に「他社より安い」「業界トップクラスの保障」といった表現を平気で入れてくることがあり、コンプラ部門で差し戻しに至るケースが業界内で散見される傾向があります。



保険TikTokで失敗する企業の多くは、KPIを「再生回数」だけで測ろうとしています。再生回数は「接触機会の量」を示す指標であり、保険ビジネスのコアKPIである契約・面談数とは離れた位置にあります。私たちが支援する際は、TikTok起点→LP→資料DL→面談→契約の5段階を最初に分離計測する設計から始めます。再生回数だけで成果を測ろうとすると、半年で「効果が見えない」と判断され、次のチャレンジが3年遅れる傾向があります。
保険TikTokのよくある質問
Q1. 保険会社や代理店がTikTokで商品名を出して紹介することは可能ですか?
保険業法第300条1項により、不当な比較表示や断定的判断の提供は禁止されています。商品名を出すこと自体が即違法ではありませんが、「他社より優れている」「必ずお得」といった優位性表現は抵触リスクが高い傾向があります。実務的には商品名を直接出さず、ライフプラン・お金の不安・家計のテーマで信頼を構築し、面談・LPへ導線を引く設計が安全な傾向です。
Q2. TikTokで保険のリード獲得CPAはどれくらいが目安ですか?
海外事例(Lemonade Insurance等)では他デジタル広告と比べて低CPAになる傾向があるとされていますが、日本の保険業界では公開された業界平均値はまだ少ない状況です。運用モデル4類型のうち、来店誘導型と教育型はリード獲得CPA計測がしやすく、ブランディング型は別途ブランドリフト調査が必要です。LP→面談予約のCVRは1%程度が現実的な水準と考えられます。
Q3. 営業職員・募集人個人がTikTokをやるリスクと対応は?
個人TikTokerが保険商品を比較・推奨する場合、保険募集人の登録範囲・所属会社の表示義務・景表法ステマ規制との関係で複合的なリスクがあります。会社公認の発信ガイドライン(名乗りルール/投稿前チェック範囲/退職時アカウント扱い/タイアップ表記)の整備が必須です。所属を名乗らずに発信していても、通報で会社の知るところとなり管理監督責任が問われるケースもあります。
Q4. TikTok広告の金融サービスカテゴリ審査が通らない場合、何を見直すべきですか?
TikTok For Businessの金融サービスカテゴリでは、金融庁・財務局の登録番号や登録証憑提出が要件化される傾向があります。審査が通らない頻出原因は、断定的表現/優位性主張/対象年齢設定/LPと広告内容の不整合のいずれかです。台本段階で審査通過基準を反映する設計が現実的で、審査時間は標準カテゴリより長くなる傾向がある前提でスケジュールを組む必要があります。
Q5. 内製と外注、どちらが向いていますか?
SNS専任2名+コンプラ常設窓口+撮影編集機材を確保できる大手生損保は内製が選択肢に入りますが、それ以外(代理店・中堅生損保・個人FP)はハイブリッド型(戦略・台本設計を外注/日次運用は内製)が現実解となるケースが多い傾向です。金融業界の知見と保険業法・募集規制への理解を持つ外注先を選ぶことが、コンプラ事故防止と運用継続率の鍵になります。
保険会社・代理店のTikTok運用代行はファイマケへ
保険業界にとってTikTokは、国内大手の多くがまだ公式参入していない、先行参入の余地が比較的残っているSNS領域です。一方で、保険業法第300条1項・TikTok広告ポリシー(金融サービスカテゴリ)・社内コンプライアンスの三重壁を越える設計を最初に作らなければ、運用は形骸化しがちです。
「社内にノウハウがない」「コンプラ対応に毎回1ヶ月かかる」「人手が足りない」「金融に詳しくない代行会社に頼んで業法上の指摘で頓挫した」——こうしたご相談を、保険会社・代理店のご担当者から多くいただきます。とりわけ2024年3月の損保4社業務改善命令以降、業界全体で「広告・SNS発信のリスク管理」への意識は格段に高まっています。一方で、リスク管理を理由にデジタル発信を縮退させる選択は、長期的な顧客接点の毀損につながります。ファイマケは「コンプラ通過と運用継続の両立」をミッションに、業法・募集規制・改正動向を内在化した運用設計をご提供します。
ファイマケは、金融業界に特化したSNS運用支援会社です。代表の苛原寛はFP1級資格保有・東京海上日動火災保険での法人営業3年・Xフォロワー約10,000人(2026年5月時点)のバックグラウンドを持ち、保険業法・募集規制・コンプラ通過の実務に踏み込んだ運用設計を強みとしています。金融コンテンツ制作実績は累計1万件以上にのぼり、銀行・信用金庫・証券・FP・保険会社・保険代理店の各カテゴリにわたる支援実績があります。「金融のことをわかっていない代行会社に頼んで業法上の指摘で頓挫した」というリスクなく、TikTok運用についてご相談いただける体制を整えています。
「これからTikTokを始めたい」「すでに運用しているが成果が見えない」「社内承認フローから整えたい」「代理店との利益相反を避ける設計を作りたい」「個人募集人の統制ガイドラインも併せて整備したい」——どのような段階でもお気軽にご相談ください!








