証券会社の動画制作ガイド|広告審査を通す企画のコツと制作会社の選び方を解説!

「動画で情報発信を強化しようと指示を受けたが、何を撮ればいいのか分からない」「動画制作会社に相談したいが、証券業界のことを理解してくれる会社をどう見極めればいいのか分からない」「せっかく企画を立てても、広告審査(考査)で止まってしまい前に進まない」、そんな悩みを抱えている証券会社の広報・マーケティング担当者は少なくないのではないでしょうか。

本記事では、金融業界に特化したSNS運用支援を行う筆者(ファイマケ代表・苛原寛)が、証券会社の動画制作を「企画のコツ」と「制作会社の選び方」の両面から、金商法・日本証券業協会(日証協)の指針、社内の広告審査対応まで一気通貫で解説します。

動画は撮って終わりではなく、どんな企画を、どんな体制で、広告審査を通しながら継続的に発信し続けられるかで成果が変わります。これから動画制作会社を探す方にも、すでに企画が広告審査で止まった経験がある方にも、ぜひ参考にしてください。

株式会社ファイマケでは金融業界に特化したSNS運用支援を提供しています。
サービス詳細はこちらからご確認ください。

この記事はこんな人におすすめ

・証券会社で動画制作の企画・発注を担当しているが、何から着手すべきか分からない方
・動画制作会社を探しているが、金商法・日証協の広告審査基準を理解した制作会社かどうかを見極められない方
・YouTube・TikTokでの動画発信を強化したいが、社内のコンプライアンス部門とどう合意形成すればいいか分からない方
・動画制作の費用相場や内製・外注・ハイブリッドの体制設計について、判断材料が欲しい方

この記事を書いた人
苛原寛のアバター 苛原寛 株式会社ファイマケ 代表取締役

慶應義塾大学商学部卒。東京海上日動火災保険で3年間法人営業を担当した後に起業。金融機関のSNS運用代行やWebコンテンツ制作・マーケティング支援を専門におこなう。制作に携わった金融コンテンツは1万件以上。Xフォロワーは8,000人超。1級ファイナンシャル・プランナーの資格を保有。著書『選ばれる金融機関になるためのSNS戦略(金融財政事情研究会 出版)』

目次

なぜ今、証券会社に動画制作が求められているのか

対面営業チャネルの限界と動画への期待

証券会社でも、店舗削減や窓口・対面営業への依存度を下げる動きが続いています。ネット証券の台頭や異業種からの参入が進むなか、顧客が最初に接するのは窓口担当者ではなく、Webサイトの動画やSNSの投稿になっているケースが増えています。

テキストや静止画だけでは伝わりにくい「投資信託や新NISAの複雑な仕組み」「アナリストや営業担当者の人柄」「企業の雰囲気」を、動画という手段で届けたいというニーズが、証券業界でも高まっている状況です。

新NISA後の広告費高騰とオウンドメディア・動画資産の重要性

2024年の新NISA制度開始以降、大手ネット証券各社はテレビCM・デジタル広告への投資を大幅に強化しており、証券業界全体で広告出稿の単価が上昇する傾向が続いています。広告だけに依存した新規顧客獲得は、体力のある大手ネット証券にとっても負担が増しつつあり、中堅・対面証券会社にとってはなおさら厳しい構造になりつつあると考えられます。

こうした環境の中で、広告を止めた瞬間に効果が消える施策ではなく、YouTubeに置き続けることで検索・SNS経由の流入を生み続ける動画コンテンツへの関心が高まっている印象があります。加えて、生成AI検索(ChatGPT・Gemini・Copilot等)から動画が引用対象になる可能性も出てきており、動画は単発の広告素材から「資産」へと位置づけが変わりつつあります。

先行する証券会社はすでに動画を「資産」として積み上げている

後述する事例が示すように、SBI証券・楽天証券・松井証券といった大手ネット証券は、単発のプロモーション動画ではなく、公式YouTubeチャンネルを継続運用し、複数年にわたって動画を積み上げるフェーズにすでに入っています。動画制作の検討は「作るかどうか」ではなく「いつ、どの企画から着手するか」の段階に移りつつあります。まずはどんな企画設計が実際に運用されているのか、次章の実例から具体的に見ていきます。

ファイマケ代表 苛原寛

証券会社の動画は、SNS運用の入口としてだけでなく、オウンドメディア・AIO対策とセットで資産として積み上がっていく傾向を感じています。単発の広告動画で終わらせず、YouTubeに置き続けることを前提に企画する視点が重要です。

証券会社の動画活用実例4選

ここからは、証券会社の動画活用の実例を紹介します。

事例①松井証券(YouTube)|お笑いタレント起用の公式チャンネルと専門特化型「マーケットナビ」の使い分け

松井証券は、公式チャンネルとマーケットや個別銘柄に関する最新の情報や投資に役立つ情報を紹介する「松井証券マーケットナビ」の2つのチャンネルを運営しています。

公式チャンネルは、マヂカルラブリーが出演する「資産運用!学べるラブリー」、カンニング竹山がMCを務める「カンニング竹山のFXトーク」やトレードに初挑戦するお見送り芸人しんいちに密着した「目指せ億トレ!FXドリーマー」など、お笑いタレントを起用した企画を年間70本以上継続配信しています。

2026年7月に開始した「目指せ億トレ!FXドリーマー」は、FX未経験者のお見送り芸人しんいちが最強FX軍団からトレードを学ぶ32日間に密着、ロケVTRをスタジオで振り返りながら専門家が解説するという形式です。FXの仕組みや基礎知識を丁寧に解説しながら話が進むので、初心者も入りやすい内容です。

一方で、「松井証券マーケットナビ」では、経済アナリストによる「松井証券大人の金融教育」企画や解説役のボルゾイさんと投資初心者のパグ君というキャラクターが投資に関連する直近のマーケット情報を解説する「サクッとマーケット解説」企画など、投資に興味がある層や既に投資をしている層に役立つ内容を発信しています。

エンタメ性の高い公式チャンネルで間口を広げつつ、専門性の高いマーケットナビで投資層をつなぎ止めるという、2チャンネルでの役割分担が見て取れます。

ファイマケ代表 苛原寛

松井証券のようにお笑い芸人を起用したレギュラー企画で年70本以上を継続する運用は、証券会社の動画が一過性のプロモーションではなく、番組として設計されていることの好例です。台本の型を先に広告審査部門と合意できていることが、この継続力を支えていると考えられます。
加えて、エンタメ色の強い公式チャンネルと、専門性を重視した「マーケットナビ」を役割分担させている点も参考になります。1つのチャンネルにすべてを詰め込むのではなく、視聴者の投資リテラシーに応じてチャンネルを使い分ける設計は、証券会社ならではの動画戦略だと感じています。

事例②SBI証券(YouTube)|複数シリーズと著名人タイアップで視聴ハードルを下げる設計

SBI証券は公式チャンネルに加え、初心者向け企画専門の「ビジネスドライブ!」というチャンネルを運営しています。公式チャンネルでは投資に関連する解説動画や活用法、自社サービス紹介、セミナーのアーカイブ映像などのコンテンツを配信しています。

一方ビジネスドライブ!は、「株式投資を始めたいけど何から手を付けたらよいか分からない」という層に向けて、斬新な切り口でコンテンツを配信しているのが特徴です。

例えば、究極の2択を迫る討論番組「マネーチョイス」では、強い個性を持つゲストの家計や価値観に、資産1億円・投資節約のプロである「くらま」が切り込む討論形式でシリーズ展開しています。VTuberへの推し活に年間300万円を投じるファン、年収1,000万円を超えながら貯金ゼロの怪談師、借金を抱えながらもギャンブルを続けるインフルエンサー、美容整形に総額1,500万円を投じたモデルなど、一般的な家計解説では扱いにくい極端なライフスタイルのゲストを起用し、そこから投資信託・個別株・株主優待といった具体的な資産形成の知識につなげる構成になっています。テーマ自体はエンタメ寄りですが、最終的に投資の学びへ着地させる型は、証券会社の動画企画のヒントになります。

他にもABEMAの恋愛リアリティーショー「さよならプロポーズ via スペイン」で結婚した夫婦を招いてのタイアップ企画、実業家・堀江貴文氏と青山学院大学陸上競技部・原晋監督との対談企画などを展開しています。こうした話題の番組や著名人の力を借りることで視聴ハードルを下げ、普段金融に興味のない層を呼び込む狙いです。

ファイマケ代表 苛原寛

SBI証券の急成長で注目すべきは、単一のフォーマットに頼らず、ターゲット層ごとに複数のシリーズを同時展開している点です。1つのチャンネルの中に複数の「入口」を用意することで、投資経験のない若年層から既存の投資家まで、幅広い層を取りこぼさない設計になっていると見ています。

事例③SBI証券(TikTok)|メッセージ性のあるショートドラマで若年層にアプローチ

SBI証券はYouTubeに加え、TikTokも活用しています。

中心となっているのは、「モノイリ3姉妹」「男子投資部の日々」といったシリーズもののショートドラマで、登場人物は10代・20代が中心です。「モノイリ3姉妹」は脚本・監督・撮影・編集・衣装・ヘアメイクといった専門クレジットが動画概要欄に明記されており、制作会社と組んで作り込まれた「ミニドラマ」として制作されています。「男子投資部の日々」も「#部活あるある」「#青春」といった、投資と直接関係のない青春ドラマ系のハッシュタグを併用しており、投資に関心のない層にもリーチする設計になっています。

@sbi_sec 整形も努力?【モノイリ3姉妹 season2 第3話】 @midnight_ticket 出演: 横田未来 佐藤七海 石川涼楓 大川楓佳 木村伊吹 脚本:榊原顕 監督:河辺昇輝 撮影:原田恒太、八橋健太 編集:七海真弥 衣装:大野碧 ヘアメイク:nari プロデューサー:koki kato 制作:株式会社DoFull #ミッドナイトチケット ♬ オリジナル楽曲 – SBI証券【公式】
@sbi_sec 【男子投資部の日々】第3話 取引 #部活 #部活あるある#学生#学生あるある #青春#動画コンテスト#投資初心者#投資#NISA#sbi証券#sbi #fyp#foryou ♬ オリジナル楽曲 – SBI証券【公式】

ストーリーの中では、金融機関らしい教育的な説明を前面に出すのではなく、登場人物が「自己投資」や「お金の使い方」について自然に触れる構成になっており、若年層に投資を身近に感じてもらうことを狙っていると考えられます。

動画の最後には自社のYouTubeチャンネル「ビジネスドライブ!」を紹介しており、TikTokを認知の入口、YouTubeを深い情報提供の場と位置づける、プラットフォームをまたいだ導線設計もうかがえます。

プロフィール欄には、口座開設へのリンクも設置されており、視聴から興味喚起、そして口座開設の検討までを一気通貫で設計している点も特徴です。

事例④楽天証券(TikTok)|

楽天証券は公式TikTokの中で、YouTubeチャンネル「トウシル」の切り抜き、株主優待で有名な個人投資家の桐谷氏の一問一答や投資初心者向けのショート動画などを公開しています。

@rakutensec 【桐谷さんに質問📢】 「②高配当×優待銘柄の見つけ方を教えてください」 365日、株主優待でゲットした優待品で暮らすことで有名な株主優待名人・桐谷さん。 一問一答で質問に答えていただきました! ※本投稿は2025年12月5日に取材した際の動画より作成しています。 #桐谷さん #株価 #楽天証券 #トウシル #株主優待 ♬ オリジナル楽曲 – 楽天証券【公式】
@rakutensec 「“投資”ってそもそもなに?」を分かりやすく解説!! 《いいね・保存であとから見返せる!》 #投資 #資産運用 #楽天証券 #社会人の勉強垢 #投資初心者 #お金の勉強 #投資信託 ♬ オリジナル楽曲 – 楽天証券【公式】

YouTubeからの切り抜きを流用することで、コンテンツ制作の工数を削減する工夫が見られます。また、自社YouTubeチャンネルへの導線も確保できています。また、SBI証券同様、切り抜き動画の続きは楽天証券のYouTubeチャンネル「トウシル」にアップされており、自社のYouTubeチャンネルへの流入を促しています。

また、証券会社が特定の銘柄を紹介する場合、コンプライアンス面の課題で悩むことも少なくないでしょう。楽天証券のTikTokでは、投資家をゲストに立てて具体的な銘柄を紹介することで、ユーザーにとって興味関心があり有益なコンテンツを制作する工夫が見られます。

@rakutensec 6月は約160銘柄と豊富な銘柄数! そこで、優待名人・桐谷さんに「10万円以下で購入可能な6月権利のおすすめ銘柄10選」を教えてもらいました。 さらに、金利上昇局面で桐谷さんが注目する銘柄は…? ※こちらは2026年5月21日に取材し、2026年6月6日に公開した動画より抜粋しています。 ※取材日は2026年5月21日で、桐谷さんは5月20日から21日にかけて銘柄を調査してくださったため現在は優待発生金額が10万円を超えている場合があります。 #桐谷さん #楽天証券 #株主優待 #トウシル #株価 ♬ オリジナル楽曲 – 楽天証券【公式】

証券会社ならではの動画制作のコツ

事例を踏まえ、証券会社が動画企画を立てる際の実務的なコツを整理します。

証券会社の動画企画は、大きく「市況解説・アナリスト出演型」「投資教育・用語解説型」「ドラマ・ストーリー型」「社員紹介・企業姿勢型」の4つの型に分けられます。ここでは、それぞれの型がどんな内容の企画なのかと、企画を立てる際のコツに加え、どの型にも共通して意識しておきたい「AIO(AI検索最適化)」の視点もあわせて解説します。

市況解説・アナリスト出演型

アナリストやファンドマネージャーが出演し、当日・週間の市況コメントや株価指数の解説などを定期的に発信する企画です。証券会社らしい専門性をそのまま伝えられる一方、話す内容がその都度変わるため、放っておくと毎回ゼロから構成を考えることになりがちです。

そこでお勧めしたいのが、動画の構成(オープニング・市況解説・出演者コメント・エンディングといった型)を先に固めてしまうことです。同じ構成で4〜5本ほど先行制作し、尺や出演者同士のやり取りといった「型」を確立してから定期配信に移行すると、撮影のたびに一から企画会議をする必要がなくなり、継続の負荷を抑えられます。投資家層・既存口座保有者への接点としては、YouTube・Xとの相性が良い企画です。

投資教育・用語解説型

新NISA・iDeCo・投資信託の仕組みなど、投資の基礎知識をわかりやすく解説する企画です。用語解説型のコンテンツは初心者層・女性層への入口として機能しやすく、Instagram・TikTokでの短尺展開との相性が良い一方、投資家向けのプロ仕様コンテンツはYouTube・Xに振り、Instagramは入口として位置づける構造設計が定石です。

ドラマ・ストーリー型

商品スペックを直接説明するのではなく、投資を始めるきっかけとなる生活上の出来事をドラマ形式で見せる企画です。商品訴求一辺倒にならず、視聴者が自分ごととして共感しやすくなります。

社員紹介・企業姿勢型

社員インタビューや職場紹介など、採用ブランディング・企業姿勢の可視化を目的とした企画です。金商法の直接的な射程外にあることが多く、コンプライアンス審査の負荷が比較的軽い領域のため、動画制作の「入口」として着手しやすい企画でもあります。

AIO(AI検索最適化)を見据えた構造化

AIOとは「AI Optimization(AI最適化)」の略で、ChatGPT・Gemini・Copilotといった生成AIが検索や質問への回答をする際に、自社のコンテンツを情報源として引用しやすくするための対策のことです。従来のSEO(検索エンジン最適化)の生成AI版とイメージすると分かりやすいでしょう。

動画の場合は、字幕・概要欄(動画の説明文)・タイムスタンプ(「0:00 オープニング」「2:30 新NISAの仕組み」のように、動画内の各パートの開始時間を示す目印)を丁寧に整備しておくことが基本です。こうした情報が整理されているほど、生成AIが動画の内容を理解し、視聴者の質問に対する回答として引用しやすくなります。

証券会社であれば、「新NISAとつみたてNISAの違いは?」「投資信託の手数料はどう見ればいい?」など、視聴者が生成AIに投げかけそうな質問をあらかじめ洗い出し、それに答える動画から優先的に作っていくのが実務的な進め方です。1本1本を思いつきで作るより、想定される質問にどれだけ答えられているかという「カバー範囲」を意識して企画すると、社内での説明もしやすくなります。こうした構造化は、動画を「公開して終わり」にせず、資産として積み上げていくうえでも重要なポイントです。

ファイマケ代表 苛原寛

証券会社の動画企画で悩ましいのは、商品訴求から入ると金商法の断定的判断規制に触れやすいことです。市況解説・投資教育・社員紹介から入り、商品説明は最後に置くという順序設計が、広告審査を通しやすくする実務上のコツだと考えています。

証券会社の動画制作で必ず押さえるべき法規制とコンプライアンス対応

金商法第37条・第38条・第40条の基本

金融商品取引法第37条は、金融商品取引業者等が広告等を行う場合、金融庁への登録番号・手数料・リスクに関する事項など、政令で定める事項の表示を義務付けています。動画の場合、画面上に表示事項を出す際は、視聴者が判読するために必要な表示時間が確保されているかが論点になります。

第38条第1号は「断定的判断の提供」を禁止しており、証券会社の動画で最も頻出する論点の一つです。たとえば「この銘柄は将来必ず値上がりします」「今始めれば確実に増えます」といった表現は、法令上禁止されている断定的な言い回しの典型例です。

また、第40条は適合性の原則を定めており、顧客の知識・経験・財産の状況・投資目的に照らして不適当な勧誘を行うことを禁止しています。特定の高リスク商品を無差別に訴求するような動画企画は、この原則との整合性を確認する必要があります。

日証協「広告等に関する指針」の動画特有の論点

日本証券業協会の「広告等に関する指針」は、リスク・費用に関する事項について、レイアウト・文字の大きさ・配色に配慮し、明確かつ分かりやすい表示を行うことを求めています。

動画の場合、テロップの文字サイズは本文の主要な訴求文言と同等以上を確保し、表示時間は視聴者が判読できる秒数を確保したうえで、配色のコントラストにも配慮する必要があります。この点は静止画広告よりも実務上の論点が多くなる傾向があります。

広告審査(考査)における3つの構造

証券会社の動画・広告審査は、大きく3つに整理できます。

  1. 社内審査:広告審査部門による自主審査。企画・台本段階から表現の妥当性を確認
  2. 社外審査(自主規制):日本証券業協会による事前審査・事後審査
  3. 当局モニタリング:金融庁・証券取引等監視委員会による監視

証券会社ならではの特徴は、社内審査だけでなく「自主規制団体(日証協)による社外審査」という中間層が明示的に存在することです。

動画が「広告審査で止まる」根本原因と回避策

証券会社の動画制作では、企画自体は問題なく決まっても、広告審査の段階で長期間ストップしてしまうケースが少なくありません。ここでは、動画が広告審査で止まってしまう典型的な原因と、それを避けるための型設計を解説します。

原因①:「動画を完成させてから審査に出す」発注順序

証券会社が動画制作を発注する際、多くの制作会社は「動画を完成させてから審査に出す」という順序で進めてしまいます。台本・絵コンテの段階で広告審査部門と表現の方向性をすり合わせないまま撮影・編集まで進めてしまうと、完成後の審査で修正指示が入った際に撮影済みのカットがまるごと使えなくなるリスクがあります。

原因②:複数部門が絡む審査構造

企画立案(広報部・マーケティング部)から広告審査部門、法務部門、必要に応じて商品部門の複眼チェックを経て公開に至るという多段階の構造は、動画制作会社がこのフローに不慣れだと、各部門からの指摘に一つずつ後追いで対応することになり、差し戻しのたびに撮影のやり直しが発生しかねません。

回避策:型・テンプレートの事前合意

実務的な回避策として観察されているのは、以下の3パターンです。

  1. 型・テンプレートを先に審査承認:動画の構成テンプレートを先に審査部門と合意し、個別動画は同型運用で簡易審査に移行する。証券会社であれば、市況解説動画の冒頭に置く免責文言(「本動画は特定の銘柄の売買を推奨するものではありません」等)をテンプレート化しておくことで、個別動画ごとの文言確認を簡略化できます
  2. 月単位の一括承認:投稿・公開のたびに個別審査を求めるのではなく、月単位でまとめて審査するフローに移行する
  3. 審査基準を内在化した台本提出:外注パートナーが事前に審査基準を理解した台本を提出することで、内部審査の時間を短縮する
ファイマケ代表 苛原寛

証券会社の動画が広告審査で止まる最大の原因は、台本ではなく発注の順序にあります。企画段階で広告審査部門を巻き込まずに撮影まで進めてしまうと、修正のたびに撮影し直しというコストが発生します。

証券会社が動画制作会社を選ぶための6つのチェックポイント

①金商法条文レベルの理解度

動画制作会社を選ぶ際、「金商法第38条1号の断定的判断の提供とは何か、具体例を3つ挙げてください」と実際に聞いてみることをお勧めしています。この質問に即答できる制作会社は、体感でまだ多くはない印象です。条文を諳んじられること自体が目的ではなく、条文ベースで台本を書ける人がチームにいるかが、審査差し戻しの回数に大きく影響します。

②広告審査フローへの対応経験

過去に証券会社の動画制作で、広告審査部門・日証協との自主規制対応を経験しているかどうかを確認します。広告審査フローを理解していない制作会社は、台本の差し戻しが繰り返され、進行が滞留するリスクが高くなります。

③証券外務員資格保有スタッフの有無

制作チームに証券外務員資格を保有するスタッフがいるかどうかも、商品性の理解度を測る一つの目安になります。必須要件ではありませんが、資格保有者がいるチームは、条文と実務の橋渡しがスムーズに行えるでしょう。

④二次活用設計への理解

動画をYouTubeだけに留めず、Instagram・TikTokへの二次展開まで見据えた撮影設計ができるかどうかも重要な選定基準です。長尺の市況解説から15〜30秒のショート動画を切り出すといった二次活用まで、撮影段階で「使えるカット」を意識して提案してくれるかを確認しましょう。1回の撮影で複数媒体への展開を見越した設計にすることで、制作コストを抑えながら接点を増やせます。

⑤YouTuber・インフルエンサー協業実績

証券会社の動画発信はインフルエンサー・YouTuberとの協業という選択肢もあります。この場合、ステマ規制(景品表示法第5条第3号告示)への対応として「#PR」「タイアップ」等の明示が必要になるだけでなく、依頼関係の透明化が投稿全体の作りにまで及ぶ点への理解が問われます。表記さえあれば良いという単層の理解にとどまる制作会社は、この観点での差し戻しを受けやすい傾向があります。

⑥AIO・LLMO対応

生成AI検索への対応も、これからの制作会社選びの論点になりつつあります。

LLMOとは「LLM Optimization」の略で、ChatGPTのような大規模言語モデル(LLM)による検索・回答の中で自社のコンテンツが参照・引用されやすくなるよう対策することを指し、前述のAIOとほぼ同じ意味で使われる言葉です。

字幕・概要欄・タイムスタンプの構造化を標準的な制作フローに組み込んでいるかどうかも確認しておくと、動画を長期的な資産として活用しやすくなります。

証券会社の動画制作に関するよくある質問

Q1. 動画の企画から公開まで、広告審査を含めてどのくらいの期間がかかりますか?

企画立案から広告審査部門・必要に応じて日証協への確認まで、投稿1本あたり1〜2週間、場合によっては1ヶ月程度かかることが少なくありません。型・テンプレートを事前に審査部門と合意しておくことで、この期間を短縮できる傾向があります。

Q2. 動画公開後、何をKPIとして効果を測定すればいいですか?

初期段階は再生数・視聴維持率、中期的には資料請求・口座開設の検討数といった行動指標で効果を測定するのが実務的です。再生数だけを追うと「接触機会の量」しか見えないため、資料請求・問い合わせといった行動指標まで含めた多層的なKPI設計をお勧めします。

Q3. 動画制作は内製・外注・ハイブリッドのどれを選ぶべきですか?

動画制作の体制は、大きく「①内製」「②外注」「③ハイブリッド」の3つに分かれます。

①すべて内製する方法は、専任担当者を置いて撮影・編集まで社内で行う方法で、リソースと知見が社内に蓄積されますが、専任者の採用・育成が前提になります。

②すべて外注する方法は、企画から撮影・編集まで動画制作会社に委託する方法で、社内にリソースがなくても着手できますが、コンプライアンス審査フローへの理解度が制作会社選びの鍵になります。

③ハイブリッド型は、企画・コンプライアンス対応・二次活用設計を外部パートナーが担い、撮影・簡易編集は内製化するという役割分担です。

ファイマケへのご相談で多いのはハイブリッド型です。企画・広告審査対応の枠組みづくりを外部パートナーが担い、日々の撮影・運用は社内担当者が行うという設計が、コストと質のバランスを取りやすい現実的な選択肢になっています。

証券会社の動画制作はファイマケへ

証券会社の動画制作は、「作ること」がゴールではなく、広告審査を通しながら継続的に発信できる企画・体制を設計することが成果への近道です。紹介した活用事例に共通するのは、証券会社が目的に応じて企画と体制を柔軟に変えながら動画を活用している点です。

株式会社ファイマケは、金融業界に特化したSNS運用支援会社です。代表の苛原寛が、動画の企画段階から金商法・日証協ガイドラインへの実務対応、そして制作後のYouTube・Instagram・TikTokでの二次活用・運用までを一気通貫で支援します。金融コンテンツ制作実績は累計1万件以上にのぼり、銀行・信用金庫・証券・FP・保険会社・保険代理店の各カテゴリにわたる支援実績があります。

動画制作の企画段階から、広告審査部門・日証協対応まで幅広くご相談いただけます。まずはお気軽にご相談ください!

  • URLをコピーしました!

著者情報

苛原 寛のアバター 苛原 寛 株式会社ファイマケ 代表取締役

慶應義塾大学商学部卒。東京海上日動火災保険で3年間法人営業を担当した後に起業。金融機関のSNS運用代行やWebコンテンツ制作・マーケティング支援を専門におこなう。
制作に携わった金融コンテンツは1万件以上。Xフォロワーは8,000人超。1級ファイナンシャル・プランナーの資格を保有。
著書『選ばれる金融機関になるためのSNS戦略(金融財政事情研究会 出版)』

目次