保険広告のデザイン完全ガイド|配色・フォント・レイアウトの設計と実在事例3選をプロが解説!

「保険の広告デザインを任されたが、何を基準にビジュアルを決めればいいか分からない」「ポスターやバナーを作ってみたものの、なんとなく素人っぽい仕上がりになってしまう」「業法で使えない表現があるのは知っているが、デザインにどう反映すればいいのか見当がつかない」といった悩みを抱えている保険広告のデザイン担当者は少なくありません。

保険広告のデザインは、感性やセンスだけで決まるものではありません。誰に何を伝える広告なのかを整理したうえで、配色・フォント・写真・レイアウト・情報量などを決める必要があります。さらに、保険広告では商品や募集形態に応じて確認すべき表示事項もあるため、デザインとコンプライアンスを切り離して考えることはできません。

本記事では、金融業界に特化した広告支援を行うファイマケ代表・苛原寛が、保険広告のデザインを考える際の基本的な設計方法から、媒体・訴求内容別のデザイン、3社の実在事例、制作・審査体制まで実務に沿って解説します。

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この記事はこんな人におすすめ

・保険会社・代理店で広告デザインを制作・発注しているが、判断の基準を持てていない方
・来店型保険ショップや代理店でポスター・チラシ・バナーを内製しており、品質を上げたい方
・保険広告を担当するデザイナーで、業法の制約下でのビジュアル設計を学びたい方
・他社保険広告のデザインに関する具体的な事例を探している方

この記事を書いた人
苛原寛のアバター 苛原寛 株式会社ファイマケ 代表取締役

慶應義塾大学商学部卒。東京海上日動火災保険で3年間法人営業を担当した後に起業。金融機関のSNS運用代行やWebコンテンツ制作・マーケティング支援を専門におこなう。制作に携わった金融コンテンツは1万件以上。Xフォロワーは8,000人超。1級ファイナンシャル・プランナーの資格を保有。著書『選ばれる金融機関になるためのSNS戦略(金融財政事情研究会 出版)』

目次

保険広告のデザインは「誰に・何を・どう伝えるか」で決める

保険広告のデザインを考えるとき、いきなり色や写真、フォントを決めるのではなく、まず「誰に」「何を」「どう伝えるか」を整理することが重要です。同じ保険商品でも、広告を見た人に「商品を知ってもらう」のか、「商品の特徴を理解してもらう」のか、「相談や資料請求につなげる」のかによって、必要な情報やデザインの優先順位は変わります。

また、駅のポスター、店頭チラシ、Webバナー、Instagram広告など、媒体によって広告を見る時間や距離、画面サイズも異なります。保険広告では商品・募集形態に応じて確認すべき表示事項もあるため、デザイン性だけでなく、必要な情報をどのように収めるかまで考えて設計する必要があります。

保険広告のデザインを考える際は、次の3点から整理すると考えやすくなります。

誰に伝えるか|ターゲットと検討段階を整理する

まず、「誰に広告を見てもらいたいのか」を明確にします。年齢や家族構成などの属性だけでなく、その人が保険を検討している段階まで考えることがポイントです。

たとえば、まだ保険を意識していない人に認知してもらう広告と、すでに保険を比較している人に資料請求や見積もりを促す広告では、必要な情報量やコピーの作り方が異なります。

子育て世代向けの商品であれば家族の生活をイメージできる写真、シニア層向けの商品であれば将来の生活を想起できるビジュアルなど、ターゲットが自分の状況と重ねやすい素材を選ぶ方法もあります。

ただし、「30代だから家族写真」「シニアだから高齢者の写真」のように属性だけでビジュアルを決めるのではなく、商品や広告の目的と合わせて検討することが重要です。

何を伝えるか|広告で最も伝えたい情報を決める

次に、「この広告を見た人に何を覚えてほしいのか」を整理します。

たとえば、「保険料の手頃さ」「保障内容」「相談のしやすさ」「企業としての姿勢」など、最も伝えたい内容を決めることで、広告の中で目立たせる要素も明確になります。

価格を訴求するなら数字を大きく配置する、相談を促すなら人物写真や相談風景を使う、企業の姿勢を伝えるならコピーとロゴを中心に構成するなど、訴求内容によって適したデザインは変わります。

一つの広告に情報を詰め込みすぎると、何を伝えたいのかが分かりにくくなるため、まず主となる訴求を決め、そのうえで補足情報や表示事項の優先順位を整理することが重要です。

どう伝えるか|媒体に合わせて情報量とレイアウトを調整する

最後に、「どの媒体で、どのような状況で見られる広告なのか」を考えます。

たとえば、駅のポスターや交通広告は、通行中や移動中に短時間で見られるため、大きな写真やキャッチコピーなど、遠くからでも認識しやすい要素が重要になります。

一方、店頭のチラシやWebサイトは、比較的近い距離で情報を確認してもらえるため、商品の特徴や相談方法など、より多くの情報を掲載できます。

InstagramなどのSNS広告では、スマートフォンでの閲覧を前提にした縦型クリエイティブや、複数枚の画像で情報を段階的に伝えるカルーセルなど、媒体の特性を踏まえた設計が必要です。TikTokなどの動画広告では、時間の経過に合わせて情報を出し分ける構成も考えられます。

さらに、保険広告では、商品や募集形態に応じて確認すべき表示事項があります。こうした情報も含めて、デザインに必要な要素を事前に整理しておくことが重要です。

このように、保険広告のデザインでは、「誰に・何を・どう伝えるか」を整理したうえで、媒体の特性や必要な情報を踏まえて具体的な表現を決めることが基本です。ここからは、この考え方を具体的なレイアウトやビジュアル設計に落とし込んでいきます。

ポスター・交通広告に見る「2ゾーン構成」という設計手法

保険広告のデザインを考える際に参考になるのが、ビジュアルとテキストを大きく分ける「2ゾーン構成」です。ポスターや交通広告では、広告を見る時間が限られるため、まず視覚的な要素で関心を引き、その後に商品情報や企業情報などを確認してもらうレイアウトが考えられます。

ただし、2ゾーン構成がすべての保険広告に適しているわけではありません。広告の目的や媒体、掲載する情報量によって適切なレイアウトは変わるため、ここでは静止画広告を設計する際の一つの考え方として紹介します。

グラフィックゾーン|まず目に留めてもらう領域

街で見かける保険会社のポスターや交通広告では、写真やイラストなどのビジュアルを大きく配置し、その周囲や下部に商品情報や企業情報を配置するレイアウトも見られます。

ここでは、広告を見た人に「誰に向けた、何の広告なのか」を視覚的に伝えることが重要です。特に駅や車内など、広告をじっくり読むことが難しい場所では、ビジュアルによって広告のテーマを把握できるように設計します。

使われる要素としては、人物写真、キャラクター・イラスト、ライフスタイルを表現する写真などがあります。広告のターゲットや訴求内容に合わせて、どのビジュアルを使うかを選ぶことが重要です。

重要なのは、単に写真やイラストを大きく配置することではなく、ビジュアルとコピーを組み合わせたときに、広告のテーマが伝わるように設計することです。

テキストゾーン|商品情報や次の行動につなげる領域

ビジュアルで関心を持ってもらった後に確認してもらうのが、商品名やキャッチコピー、企業情報などのテキストです。広告の目的に応じて、商品・サービスの特徴や問い合わせ先、Webサイトへの導線などを配置します。

主な要素としては、キャッチコピー、商品名・サービス名、会社名、問い合わせ先、QRコード、WebサイトのURLなどが挙げられます。また、保険広告では、商品や募集形態に応じて、保険業法や関連するガイドラインなどを踏まえた表示が必要になる場合があります。

ただし、表示が必要な事項を単純に広告の下部へまとめればよいというわけではありません。必要な表示内容や表示方法は、商品・募集形態・広告媒体などによって異なるため、実際の広告ではコンプライアンス部門や法務部門などと確認しながら設計する必要があります。

QRコードを配置する場合も、単にスペースが空いている場所に置くのではなく、掲出場所や見る距離などを考慮して、実際に読み取れるかを確認しておくことが重要です。

2ゾーン構成が考えやすい理由

ポスターや交通広告でビジュアルとテキストを分ける構成が考えやすいのは、広告との接触時間と情報量の違いを整理しやすいためです。

たとえば、駅貼りポスターや電車内広告では、広告をじっくり読むとは限りません。そのため、最初に写真やイラスト、キャッチコピーなどで広告に目を向けてもらい、関心を持った人が商品名や詳細情報、QRコードなどを確認するという、段階的な情報設計が考えられます。

また、ビジュアルとテキストの役割を分けておくことで、「目を留めてもらうための情報」と「理解・行動につなげるための情報」を整理しやすくなるというメリットもあります。

ただし、2ゾーンを必ず上下に分ける必要はありません。左右に分割したり、ビジュアルの中にキャッチコピーを配置したりするなど、媒体のサイズや視線の流れに合わせてレイアウトを調整します。

表示事項を後から押し込まない

保険広告では、デザインを作った後に必要な表示事項を追加すると、レイアウトの調整が難しくなることがあります。たとえば、ビジュアルやキャッチコピーを先に大きく配置した結果、必要な表示事項を入れるスペースが不足し、文字を小さくしたり、背景とのコントラストが低くなったりすると、広告全体の視認性に影響します。

そのため実務では、デザインに着手する前に、その広告で必要となる表示事項とおおよその情報量を確認し、それを確保したうえでビジュアルやコピーの大きさを決めるという進め方が重要です。

つまり、保険広告では「まず見た目を作って、最後に必要な表示を入れる」のではなく、必要な表示を確保したうえで、見せたい情報とのバランスを考えてレイアウトすることが重要です。

保険広告のデザインに関する事例3選

ここからは、他社の保険広告がどのような考え方でデザインされているかを、実在事例とともに紹介します。

①メットライフ生命|複数媒体でブランドメッセージを統一する広告展開

メットライフ生命は、ブランド広告「世界とずっと。メットライフ。」を展開し、キーメッセージを軸に、YouTubeを中心としたインターネット広告や屋外広告を実施しました。

この事例から参考にしたいのは、広告ごとに異なるデザインを作るのではなく、ブランドメッセージやビジュアルの共通要素を残しながら広告を展開している点です。

Web広告では、配信先やターゲットに合わせて複数のクリエイティブを制作することがあります。その際、メインコピーやロゴ、色、写真など、複数の広告で共通して使用する要素を決めておくことで、広告ごとに表現を変えながらも、ブランドとしての統一感を保ちやすくなります。

また、認知を目的とした広告と、セミナーや資料請求など具体的な行動を促す広告では役割が異なるため、目的に応じて情報量やCTAの見せ方を変えることも重要です。

②ほけんの窓口|文字とロゴだけで姿勢を伝える新聞広告

ほけんの窓口グループは2025年に「ほけんの窓口、正直宣言。」と題した広告を日本経済新聞朝刊と日経電子版に掲載しました。この広告の特徴は、タレントや商品写真などを使わず、キャッチコピーとロゴを中心に紙面を構成している点です。

同社は広告や自社ニュースリリースの中で、この表現を「保険のことについてさまざまな話題が取り上げられる中で、お客さまのニーズに沿った保険をご提案してきた」という姿勢を改めて伝えるためのものと説明しています。同社はそれまでタレントを起用したテレビCMも展開しており、今回はそうした広告とは対照的に、文字とロゴを中心としたシンプルな表現に絞っています。

この事例から参考にしたいのは、広告では要素を増やすだけでなく、あえて情報を削ることもデザイン上の選択肢になるという点です。写真やイラストなどを使わず、コピーとロゴに視線を集中させることで、伝えたいメッセージを明確にしています。

また、同社がテレビCMではタレントを起用しながら、新聞広告では文字を中心とした表現を採用していることから、ブランドとしての一貫性を保ちながら、媒体や広告の目的に応じて情報量や表現方法を変えることも参考になります。

ファイマケ代表 苛原寛

保険代理店や保険ショップが複数の媒体で広告を展開する際にも、「認知を取る広告」「企業姿勢を伝える広告」「問い合わせにつなげる広告」など、目的に応じて表現を使い分ける考え方につながります。

③ライフネット生命|広告の受け皿となるWebサイトの情報設計

ライフネット生命の自社サイトのトップページは、CTA(行動喚起ボタン)を「無料で10秒見積り」と「ぴったり診断見積り」の2本立てで配置し、異なるニーズに対応できる構成になっています。あわせて「オリコン顧客満足度 生命保険 第1位」といった評価や実績を配置しており、広告やSNSなどをきっかけにサイトを訪れた人が、商品を検討する前に確認したい「どのような会社なのか」を判断するための情報を、ファーストビューで確認できる構成です。

この事例から参考にしたいのは、広告やWebサイトでは、伝えたい情報をすべて同じ強さで並べるのではなく、ユーザーの検討段階に合わせて優先順位をつけることです。「無料で10秒見積り」と「ぴったり診断見積り」という2つのCTAを用意することで、異なる検討ニーズに対応しています。

また、ファーストビューに第三者による評価や契約件数などを配置することで、商品説明に入る前に企業に関する情報を確認できる構成になっています。

こうした考え方はWebサイトだけでなく、チラシやポスターなどにも応用でき、限られたスペースの中で「最初に何を見せるか」「次に何を確認してもらうか」を整理することが、保険広告のデザインでは重要です。ただし、第三者評価や実績を広告に掲載する場合は、調査時点や対象範囲、出典などを確認し、実際の表示が適切かを個別に確認する必要があります。

ファイマケ代表 苛原寛

こうしたデザインの考え方は、特定の広告だけでなく、来店型保険ショップや代理店がWeb広告やSNS広告で相談予約・問い合わせを促す際にも応用できます。
広告を制作するときは、単に見た目を整えるのではなく、「誰に、何を伝え、次にどのような行動を促すのか」から逆算して、情報の優先順位やビジュアルを設計することが重要です。

保険広告のデザインを決める4つのビジュアル要素と業法対応

保険広告のデザインを考える際は、色・書体・写真・イラストなどのビジュアル要素を、ターゲットや広告の目的に合わせて選ぶことが重要です。この章では、それぞれを選ぶ際の実務上のポイントを整理します。

配色設計|ブランドイメージと訴求内容に合わせて色を選ぶ

保険広告において、色は広告全体の印象を左右する重要な要素です。特に保険会社の広告では、企業や商品のブランドカラーと広告の配色をそろえることで、発信元を認識しやすくする設計が考えられます。

色にはそれぞれ一般的に連想されやすいイメージがあります。たとえば、青・紺系は「信頼・安定・誠実」と結び付けて捉えられることがあり、緑系は「健康・安心・自然」といったイメージと組み合わせられることがあります。一方、オレンジ・黄系の暖色は、明るさや親しみやすさを表現したい場合の選択肢になります。

ただし、「青なら信頼感が伝わる」といったように色だけで広告の印象が決まるわけではありません。企業のブランドカラー、写真やイラスト、コピー、商品の特性などと組み合わせて、広告全体としてどのような印象をつくるかを考えることが重要です。

ファイマケ代表 苛原寛

表示する情報が多い場合は、色を増やしすぎず、メインカラーとアクセントカラーなど役割を決めて使い分けると、情報の優先順位を整理しやすくなります。
表示事項や注意書きについては、背景色とのコントラストを確保し、文字が読みにくくならないようにすることも確認しておきましょう。

フォント設計|見出しと本文で書体・太さを使い分ける

保険広告では、見出しと本文で書体や太さを使い分けることで、情報の優先順位を視覚的に示せます。

たとえば、見出しに太めのゴシック体を使い、本文や補足情報には比較的細い書体を使うことで、「まず何を見てほしいのか」と「詳しい情報は何か」を整理できます。ポスターや交通広告では、離れた位置からでも主要なメッセージを把握できるよう、見出しの文字サイズやコントラストを十分に確保することが重要です。

明朝体は、広告全体に落ち着きや上品さを持たせたい場合の選択肢になります。ただし、書体だけで印象を決めるのではなく、文字サイズや背景とのコントラスト、媒体の閲覧環境も含めて判断する必要があります。

特に表示事項や注意書きなどの小さな文字は、デザイン上のバランスだけでなく、実際の掲出サイズや閲覧環境で問題なく読めるかを確認しましょう。

写真選定|ターゲットと広告の目的から人物素材を選ぶ

保険広告における人物写真は、「誰に届けたいか」だけでなく、「何を伝えたいか」から逆算して選びます。

たとえば、家族向けの商品であれば家族の生活シーン、相談を促す広告であれば担当者と顧客が話している場面など、訴求内容と写真の状況を合わせることで、広告を見る人が内容をイメージしやすくなります。

また、表情やシーンの選び方も重要です。保険の必要性を伝える場合でも、不安や危機感を過度に強調するのではなく、相談している場面や将来に備えている場面など、広告の目的に合った表現を選ぶ必要があります。具体的な表現については、商品性や募集形態などを踏まえて、法務・コンプライアンス部門に確認しましょう。

キャラクター・イラスト|ブランドの識別性を高める選択肢

キャラクターやイラストは、写真とは異なる方法で広告の世界観を表現できるビジュアル要素です。特に、保険という比較的説明量の多い商材では、キャラクターを継続的に使用することで、広告やコンテンツを見た際に発信元を認識しやすくする設計も考えられます。

たとえば、ライフネット生命では「ライフネッコ・ミツモロウ」を広告・コンテンツに活用しています。同じキャラクターを複数のクリエイティブで継続的に使用することで、異なるテーマや出演者を扱う広告でも、ブランドとのつながりを持たせることができます。

イラストを使用する場合は、キャラクターのデザインだけでなく、色・線・表情・レイアウトなどのルールをあらかじめ決めておくと、媒体やクリエイティブが増えた場合にも統一感を保ちやすくなります。

保険広告では「デザイン」と「業法対応」をセットで考える

保険広告では、色や写真などのビジュアルだけでなく、広告に記載するコピーや表示事項まで含めてデザインを考える必要があります。

保険募集に関する広告・表示では、保険業法や金融庁の監督指針などを踏まえた確認が必要です。具体的な適用関係は、商品性・募集形態・表示内容などによって異なるため、デザイン完成後に必要な表示を追加するのではなく、制作の初期段階から法務・コンプライアンス部門と確認することが重要です。

特に、以下のような表現を使用する場合は、根拠や表示方法を確認しましょう。

  • 他社の商品・サービスより優れていると受け取られる比較表現
  • 将来の給付や契約結果などを確実であるかのように示す表現
  • 消費者の不安や危機感を過度にあおる表現
  • 数値や実績、ランキングなどの根拠が確認できない表現

また、広告に使用するコピーや数値、比較表現などは、ビジュアルとの組み合わせによって受け取られ方が変わる場合があります。使用する表現の根拠や表示方法を確認したうえで、デザインに反映することが重要です。

なお、インフルエンサーなど第三者に広告投稿を依頼する場合は、保険業法だけでなく、景品表示法上のステルスマーケティング規制についても確認が必要です。広告であることが分かる表示を適切に行うなど、依頼先への指示を含めた運用体制を整えておきましょう。

媒体別に考えるデザイン設計と情報量の調整

前章では、ビジュアルとテキストを分けて情報を整理する「2ゾーン構成」を紹介しました。ただし、広告を見る時間や距離、画面サイズは媒体によって異なるため、すべての広告に同じレイアウトを当てはめることはできません。

ここでは、代表的な媒体ごとに、デザインを考える際のポイントを整理します。

交通広告|短時間・遠距離で伝わる構成にする

交通広告は、駅や電車内などで移動中に見られるため、短時間かつ一定の距離からでも広告の内容を把握できる設計が重要です。そのため、人物・キャラクター・商品などのビジュアルや、広告の主となるキャッチコピーを大きく配置し、まず「何の広告なのか」「誰に向けた広告なのか」が伝わる構成を考えます。

一方、商品名・会社名・QRコード・表示が必要な事項などは、主となるビジュアルやコピーとの優先順位を整理して配置します。

同じ交通広告でも、駅ホームのポスターと電車内の広告では、見る位置や距離が異なります。媒体のサイズだけでなく、実際にどの位置から見られるのかを想定して文字サイズや情報量を調整しましょう。

店頭・窓口ポスター|近距離で確認できる情報量を活かす

来店型保険ショップや代理店の店頭・窓口では、交通広告と比べて広告を近い位置から確認してもらえるため、商品の特徴や相談方法など、より詳しい情報を掲載する設計も可能です。

たとえば、相談風景やスタッフの写真を使って「どのような場所で相談できるのか」を伝えたり、取扱保険会社数や相談の流れなど、来店前に知っておきたい情報を掲載したりできます。

ただし、情報を増やせるからといって、すべてを1枚に詰め込む必要はありません。「このポスターを見た人に何を知ってほしいのか」を決めたうえで、主となる情報と補足情報を整理することが重要です。

Webバナー・SNS広告|限られた画面内で情報を整理する

WebバナーやSNS広告では、表示される画面サイズや縦横比に合わせて、情報量とレイアウトを調整する必要があります。特に小さなバナーでは、多くの情報を入れるほど文字が小さくなり、広告を見た人が何を伝えたいのか分かりにくくなる可能性があります。そのため、商品名や主要な訴求、CTAなど、広告を見た人に伝えるべき情報を絞って配置することが重要です。

Instagram広告などでは、1枚の画像にすべての情報を入れるのではなく、カルーセルで情報を段階的に伝える方法もあります。1枚目でターゲットやテーマを示し、2枚目以降で商品の特徴や具体的な情報、最後に相談・資料請求などの行動を促す構成にすることで、情報量の多いテーマにも対応できます。

動画広告では、静止画のようにすべての情報を一画面に収めるのではなく、時間の経過に合わせて情報を出し分けることもできます。冒頭でテーマを示し、その後に商品の特徴やブランド情報、最後にCTAを提示するなど、視聴の流れに合わせて情報を配置します。

ファイマケ代表 苛原寛

このように、媒体ごとに「どれだけの情報を、どのタイミングで、どの大きさで見せるか」を考えることが、保険広告のデザインでは重要です。

訴求内容別のビジュアル設計パターン

何を訴求するかによって、広告で目立たせる情報や、写真・コピー・レイアウトの組み合わせは変わります。この章では、保険広告で考えられる代表的な3つの訴求パターンと、それぞれのビジュアル設計を整理します。

価格訴求型|数字を主役にして条件を分かりやすく伝える

「月額○円〜」「保険料を抑えたい方へ」のように、保険料を広告の主な訴求とするパターンです。この場合は、価格や保険料に関する数字を大きく配置し、それ以外の要素を整理することで、広告を見た人が最初に確認すべき情報を明確にします。数字の近くには、対象年齢や保障内容など、その金額が適用される条件も分かりやすく配置することが重要です。

たとえば「月額○円〜」と表示する場合でも、年齢・性別・保障内容などによって保険料が変わるのであれば、その条件を含めて表示できるスペースをデザインの段階から確保しておきます。

また、「業界最安値」「他社より安い」といった比較表現を使用する場合は、比較対象や根拠などを確認する必要があります。価格を大きく見せることだけを優先せず、条件や注記を含めて誤解なく伝えられるレイアウトを考えましょう。

課題解決型|人物写真とコピーで相談のきっかけをつくる

「今の保険料が適切か分からない」「保障内容を一度整理したい」といった、生活者が抱える悩みを起点にするパターンです。人物写真や生活シーンの写真と、「保険を一度整理してみませんか」「自分に合った備え方を考えたい方へ」といったコピーを組み合わせることで、広告を見る人が自分に関係する情報だと認識しやすい構成にできます。

相談予約や来店を目的とする広告では、悩みを提示するだけで終わらせず、「無料相談」「店舗で相談」「オンラインで相談」など、次に取れる行動まで明確にすることが重要です。

一方で、「加入しないと手遅れ」「このままでは危険」といったように、不安を過度にあおる表現は避け、商品・サービスの内容に沿って適切に表現する必要があります。具体的なコピーについては、商品性や募集形態などを踏まえて法務・コンプライアンス部門に確認しましょう。

ライフスタイル提案型|生活シーンから保険の必要性を伝える

「将来の暮らしに備える」「家族との時間を大切にする」といった生活シーンを起点に、保険を「将来への備え」という文脈で伝えるパターンです。たとえば、家族で過ごす場面や将来の生活をイメージできる写真を大きく使い、コピーや商品情報を組み合わせることで、保険そのものを前面に出さずに広告のテーマを伝える構成が考えられます。

この場合も、写真やコピーの雰囲気だけで商品内容を曖昧にするのではなく、何の広告なのか、どのような商品・サービスなのかが分かる情報を適切に配置することが重要です。

また、生活者にとって魅力的な将来像を示す場合でも、保障内容や将来の給付などについて誤解を招く表現にならないよう注意が必要です。

訴求パターンを選ぶ際は、業態だけで決めるのではなく、「広告の目的」「ターゲット」「媒体」「次に促したい行動」を組み合わせて考えましょう。

訴求パターン主な訴求内容デザイン上のポイント
価格訴求型保険料数字を目立たせ、適用条件も近くに配置
課題解決型保険の悩み・相談人物写真や共感コピーで悩みを提示し、相談への導線を設計
ライフスタイル提案型将来の暮らし・備え生活シーンの写真とコピーを組み合わせ、商品情報につなげる

保険広告デザインの制作体制と審査対応

保険広告では、デザインの完成度だけでなく、制作前に必要な情報や表示事項を整理しておくことも重要です。

特に外部のデザイナーや制作会社に依頼する場合、広告の目的やターゲットだけでなく、使用できる表現、表示が必要な事項、ブランド上のルールなどを事前に共有しておかないと、制作後の修正や社内審査での差し戻しにつながることがあります。

そのため、デザイン制作とコンプライアンス確認を別々の工程として考えるのではなく、制作の初期段階から必要な情報を整理しておくことがポイントです。

デザイン制作前に確認しておきたい5つの項目

保険広告のデザインを外注する場合は、以下の情報をブリーフィングとしてまとめておくと、制作側との認識を合わせやすくなります。

  • 広告の目的:認知、商品理解、相談予約、資料請求など、広告を見た人に促したい行動
  • ターゲット:年齢や家族構成だけでなく、保険の検討段階や想定するニーズ
  • 媒体・サイズ:ポスター、Webバナー、Instagram広告など、掲出場所やクリエイティブのサイズ
  • 表示事項・使用表現:商品・募集形態に応じて必要な表示事項、使用できる表現や注意すべき表現
  • ブランドルール:ブランドカラー、ロゴ、指定フォント、写真やイラストのトーンなど

特に表示事項は、デザイン完成後に追加するとレイアウトを大きく変更する必要が生じる場合があります。必要な表示内容をできるだけ早い段階で確定し、デザインの中にどのように組み込むかを考えておくことが重要です。

デザインと審査を別工程にしない

保険広告では、デザインが完成してから初めてコンプライアンス確認を行うのではなく、制作前に使用する表現や表示事項を確認しておく方法もあります。たとえば、継続的に広告を制作する場合は、過去に確認済みの表現やブランドルールを社内で整理し、デザインテンプレートや制作ガイドラインに反映することが考えられます。

ただし、テンプレートを作成したからといって、すべての広告について個別の確認が不要になるとは限りません。商品・募集形態・媒体・掲載内容などによって確認すべき事項が変わる場合があるため、各社の審査ルールに沿って運用する必要があります。

ファイマケ代表 苛原寛

内製・外注を問わず、デザイン担当者だけで判断せず、必要に応じて法務・コンプライアンス部門と連携できる制作フローを整えておくことが重要です。

内製・外注で役割を明確にする

保険広告の制作体制には、社内で制作する方法と、デザイン会社や広告会社などに外注する方法があります。

内製の場合は、商品や社内ルールを理解した担当者が制作に関われる一方、デザインスキルや制作リソースを社内で確保する必要があります。

外注する場合は、制作会社にデザインを任せられる一方、広告の目的やターゲット、表示事項、ブランドルールなどを事前に共有することが重要です。特に金融・保険分野の広告では、一般的なデザイン制作のブリーフィングだけでなく、商品・募集形態に応じた確認事項を整理して渡す必要があります。

外部の専門会社に依頼する場合でも、最終的な広告表現の確認や社内審査の責任主体まで委託先に移るわけではありません。自社の審査体制と外部パートナーの役割をあらかじめ明確にしておきましょう。

保険広告のデザイン・クリエイティブ運用代行はファイマケへ

保険広告では、デザインの見た目だけでなく、商品・ターゲット・媒体に合わせた訴求設計や、必要な表示事項を踏まえたクリエイティブ制作が重要です。

株式会社ファイマケは、金融業界に特化したSNSマーケティング支援会社です。金融コンテンツ制作実績は累計1万件以上にのぼり、銀行・信用金庫・証券・FP・保険会社・保険代理店などの支援に携わってきました。代表の苛原寛は、FP1級資格を保有し、東京海上日動火災保険で3年間の法人営業を経験しています。

「広告を作りたいが、どのようなデザインにすればよいか分からない」「制作会社に依頼しているものの、保険広告特有の確認事項をどう共有すればよいか分からない」など、どのような段階でもぜひお気軽にご相談ください。

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著者情報

苛原 寛のアバター 苛原 寛 株式会社ファイマケ 代表取締役

慶應義塾大学商学部卒。東京海上日動火災保険で3年間法人営業を担当した後に起業。金融機関のSNS運用代行やWebコンテンツ制作・マーケティング支援を専門におこなう。
制作に携わった金融コンテンツは1万件以上。Xフォロワーは8,000人超。1級ファイナンシャル・プランナーの資格を保有。
著書『選ばれる金融機関になるためのSNS戦略(金融財政事情研究会 出版)』

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